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りくそらたのファンタジー小説おきば。
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LOVE PHANTOM第1章   運命の扉-8-
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LOVE PHANTOM第1章  運命の扉-8-

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潮風が長い髪をなびかせる。
頬に当たる風は冷たくてとても気持ちがいい。
初めて見る海はどこまでも蒼く、地平線が遥か向こうに見える。
吸い込まれそうな海の蒼を覗き込みながら、アイシェは大きくため息をついた。

知らない土地に放り出されてしまったアイシェは、帰るすべを知らない。
今いる所がどこなのか、ここから村までどれぐらいかかってどうやって帰ればいいのか見当も付かない。
しかも攫われた身なので旅の路銀も、生活に必要なものも何ひとつ持ち合わせていなかった。
きっとひとりだと途方にくれていただろう。


あの後早々に支度を整え、ふたりは船に乗った。
シュラの村のある風の渓谷へは、船で一度大陸の北にあるトロイへ向かわなければならない。
普段は2日半ほどで着くトロイへの航路も、季節風と潮の流れの影響で今の時期は4日ほどかかる。
トロイへ着いてからも、風の渓谷までは4〜5日歩かなければならない。
ましてや旅なれないアイシェがいるために、村に着くまではかなりの時間を要するだろう。
しばらくは2人旅が続く。


村まで送ってくれるというジェイの申し出は、とてもありがたかった。
ジェイがいなければ途方にくれていただろう。
でも、このまま好意に甘えて帰ってしまってもいいのだろうか。
もちろん村に帰りたくないわけではない。
できることなら1日でも早く村に帰りたい。
村の者もみんな心配してるであろう。
我が子のように可愛がり育ててくれた祖父ガランは、大丈夫だろうか。
アイシェがいなくなった心労で、倒れてしまったりしていないだろうか。
ガランももうかなりの年だ。
早く帰って祖父を、みんなを安心させたい。
きっと今頃、突然いなくなったアイシェの行方を必死で探しているだろう。
そう思うのに、心にチクリと何かが突き刺さる。
自分を送って行った後、ジェイはどうするつもりなのだろう。
今朝、ジェイが準備している時に見えた荷物が気になる。



「そろそろ中に入った方がいいんじゃないか?体が冷えるぞ?」
甲板に出てきたジェイが声を掛けた。
「ん…、もう少しいるから先に中で休んで?」
アイシェはそう言って笑う。
「そうか?」
ジェイは中に入るでもなく、甲板の手すりに身を預けて海を眺めた。
何を考えてるのだろう。
ジェイの横顔をそっと覗き見た。

薄暗い地下ではよくわからなかったが、陽の下で見るとジェイは想像以上に整った顔立ちをしていた。
琥珀色のサラサラの髪。
海のように深く蒼い瞳。
鼻筋はスッと通り、真一文字に結ばれた唇は凛々しい。
あどけなさの抜けたスッキリとした顔立ちをしているが、笑うと時折、幼い表情がのぞく。
顔は決して悪くはない。むしろ男前な方だ。
年はアイシェよりも2つ3つ上ぐらいだろうか。



「オレの顔に、何かついてる?」
あまりに自分を見つめるので、ジェイが苦笑しながらアイシェを覗き込んだ。
慌てて視線を逸らし、ブンブンと首を横に振る。
それを見てジェイがまた、小さく笑う。

「ねぇ。…ジェイはどうして、私を村まで送ってくれるの…?」
見ず知らずの自分に、どうしてそんなに親切にしてくれるのだろう。
不思議でならない。
その問いにジェイは苦笑した。
少年っぽさを残した表情が覗く。
「土地勘のないアンタをそのまま置き去りに…なんて、鬼みたいな事はできないよ。ちょっとした親切心ってやつだ」
「でも…」
アイシェは言葉に詰まる。
親切でここまでしてもらうのは申し訳ない。
「それにシュラの村にも少し興味があるからな。地図にもない未知の村だぜ? トレジャーハンターのオレが興味を持たないはずないだろ?」
ジェイが得意げに、にやりと笑った。
旅の目的の大半はそちらにあるらしい。
「その後はどうするの?」
「後は北へ行って、いろいろと見て回ろうかと思ってるけど…。
何?オレに興味ある?」
オレって男前だからなぁと冗談交じりに付け加えて、ジェイはニヤリと口の端を持ち上げた。


「ねぇ、ジェイ…」
「んー?」
「それに私も、連れて行ってくれる?」
その言葉にジェイは目を大きく見開いた。

「…何? オレに惚れちゃった?」
軽く流してくれる事を期待していたのに、覗き込んだアイシェの顔はひどく曇っていた。
「…どうした?」
眉根に皺を寄せて何かを考え込むような表情は、少しでも突いたら簡単に崩れてしまいそうなぐらいに危うい。



「…ジェイは……セイラさんの仇を取りに行くつもりなんでしょう?」
ジェイの体がピクリと動く。
顔つきが微かに変わった。

「…何言ってんだよ。そんな事、するわけないだろ?」
オレ、面倒は嫌いだぜ?と苦笑する。
「嘘ばっかり」
アイシェは顔を上げるとジェイにずいっと詰め寄る。
「だって。荷物にたくさん爆薬とかナイフとか、詰め込んでたじゃない。普通の旅ならそういうものは、必要ないでしょ?」
大きな目をなおも大きく見開いて、ジェイに詰め寄った。
嘘を見抜いてやろうとする意志の強い瞳だ。
「オレはトレジャーハンターだぞ? 遺跡や古いものを調べるのに、爆薬や危険を回避する武器は必要だろ?」
「遺跡を調べたりする人は古いものを大事にするって、おじいちゃんが言ってた。だから爆薬なんかで、貴重なものを壊したりしないでしょ?」
「……」
アイシェはグッとジェイの服を掴んだ。
「ねぇ、行くなら私も連れて行って。こんな気持ちのままじゃ、村に帰れない」
アイシェの目は真剣だ。
決して簡単な決心ではないと、強い瞳からそれが感じ取れる。
ジェイは小さくため息をつくと、そっとアイシェの手を自分から引き離した。


「だから、何を言ってるんだよ? オレは仇を討ちに行くつもりなんてねぇよ」
「嘘」
「他にやることがあるんだ」
「じゃあそれに私も連れて行って」
「駄目だ」
「どうして!?」
「アンタは攫われてあそこにいたんだろ? 村の人が心配してる」
「じゃあ、村に寄ってから出かければいいじゃない」
「見ず知らずの男に着いて行くって言うのか? 許してもらえるわけないだろ?」
「ちゃんと上手に話すから」
「敵討ちに行きますってか? なおさら無理だね」
「じゃあ、置手紙をして夜中の内に…」
「くどい!!」
いつまでも食いかかってくるアイシェに痺れを切らせたのか、ジェイが強く言い放った。
「言っとくけど、仮に敵討ちに行くとしてもそうじゃなくても、オレはアンタを連れて行くつもりはない」
「どうして?」
「足手まといになるだけだ」
「私、術も使えるから…。ジェイも見たでしょ? 足手まといにならないようにする。だから…」
「アイシェ」
低音の声が、静かにアイシェを読んだ。
怒気を含んだ声色に、思わずビクリと体が強張る。
「たとえすごい術が使えたとしても、そんな事は関係ない。オレはあんたを連れて行く気はないからな」
ジェイはそう言うとめんどくさそうに頭を掻き、船内へと消えて行った。




>>To Be Continued





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