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りくそらたのファンタジー小説おきば。
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LOVE PAHNTOM第2章 ファントム-6-  
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第2章 ファントム-6-

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その後ジェイ達は、アサシンのアジトからランバルディア大陸の北の果ての港トロイまで引き下がる。
後から分かったことだが、ジェイ達が捕まっていたアジトは、珊瑚海に浮ぶカリビアンと呼ばれる俗に世間から言われる海賊島だったようだ。
連行される途中、統率の取れた集団だと感じた船の乗組員達は、全てジルの船のクルーだったことが分かり、改めてリーダーとしての統率力や、将校としてのカリスマ性に驚かされた。
普段は酒にだらしのない男だが、いざという時は絶大な力を発揮する。
ジルの戦術や能力が高く評価された戦いだった。



ローグから開放され、ひと段落ついたクルー達は、今までの遅れを取り戻すかのように飲めや歌えやの祝宴を連日連夜開いた。
海の男達の腹は底なしだ。
次々に運ばれてくる料理はすぐになくなり、酒の入った樽はあっという間に底をつく。
ジルが精鋭を集めたと言うクルーの数はそう多くはないが、狭い酒場の中では身を寄せ合うほど窮屈だった。
そんな事はかまいもせず、貸切のような状態で連日連夜宴が開かれる。

ジェイは正直ついて行けなかった。
初めは一緒になって飲んではいたが、男達の酒の強さは半端じゃない。
ジェイも決して弱い方ではないが、さすがに海の男達と比べると赤子のようだった。
グラスを空けると酒を並々とつがれ、飲まないでいると一気コールがかかる。延々それの繰り返しだ。
これでは体がいくつあっても足りない。
そんなハイペースの祝宴の中、ジルは平気な顔をして酒をあおる。
酒の強さはぴか一だ。
「いろんな意味でたいしたもんだよ、あのおっさん」
夜道に出ると、ジェイはため息をつきながらそう呟いた。
あれから5日が過ぎていた。
横腹の傷も完治までとはいかないが、普段の生活に支障がない程度までには回復していた。


「どうした?もう降参か?」
酒場から少し離れた海の見える場所で涼んでいたジェイは、頭の上から降ってきた聞き覚えのある声に顔を上げた。
「あんたらの酒のペースに合わせてたら体がいくつあっても足りねぇよ」
「そうか?あんなもん、序の口だぜ?」
そう言ってジルが白い歯を見せて、にやっと笑った。
「おっさんと一緒にすんな」
「鍛え方が足りんな、坊主」
誇らしげに笑う。
そんな事で鍛え方が足りないといわれても困る。
飲めたことに越したことはないが、あそこまで飲めるのは異常だ。
ジェイがほとほと呆れた顔をしていると、ジルが何かに気づいて振り返った。
「────ジル将校!!」
背後からの聞きなれた声に、ジェイも振り返った。
「どうした?」
そこにはジルの片腕とも呼ばれるリリが立っていた。
ここまで走って来たのに、息ひとつ切らしてない。
ジルにしろリリにしろ、海に生きる者達はタフだ。
疲れというものをまるで知らない。
ここ何日か彼らと生活をしているうちに、その事を思い知らされた。
「アイシェさんが目を覚ましました」
その言葉に、2人は顔を見合わせた。



□ □ □



酒場から少し離れたところにある小さな宿屋に、アイシェは泊っていた。
ジルを含むクルー達は船で寝泊りしていたが、さすがに病人とはいえ男達の寝床に寝かしてはおけないということで別に宿を取り、リリが付きっ切りで見てくれていたのだった。
倒れてから5日間、アイシェは死んだように眠っていた。
それがようやく目を覚ましたと言う。


「───ジェイ…!」
部屋のドアを開けると、アイシェの顔がパッと輝いた。
知っている顔を見て安心したのだろう。
その様子に、ホッと胸をなで下ろす。
半分は別に目的があったにしろ、半分は自分の為に捕まりひどい目にあったのだ。
責められても仕方がないのに、嬉しそうに笑ってくれる姿には正直救われる。
「もう平気か?」
「うん、大丈夫。私、5日も眠ってたんだってね」
アイシェは申し訳なさそうに笑う。
見たところ元気そうだ。
「大丈夫みたいだな」
その様子を見たジルは安堵の声を漏らし、側にいたリリと顔を見合わせる。
「積もる話もあるだろ。ひと段落ついたら呼んでくれや」
そう耳元で呟くと、ポンと肩を叩いて部屋の外へ出て行った。
ふたりの関係を勘違いしているのか、どうも気を利かせたつもりらしい。
はたから見るとそんな風に見えるのだろうか。
ジェイはふと思考を巡らせた。

「ジェイ?」
「あ…、ああ」
部屋の入り口で考え込むように立ちすくむ姿に、アイシェが心配そうに声を掛けた。
ジェイは入り口のドアを開けたままにして、部屋に入るとベッドの脇にある木の椅子に腰かけた。
付き添っていたときに使っていた椅子だ。


「悪かったな」
「?」
しばらくの沈黙の後、そう口を開くとアイシェが不思議そうに首を傾げた。
「俺のせいで怖い思いをさせちまって…」
ごめん、と頭を下げる。
「どうして謝るの?ジェイのせいじゃないのに…」
アイシェが困ったように首を横に振った。
「私の方こそ2度も助けてもらって、何てお礼を言ったらいいのか…。
傷は大丈夫なの?」
翠の大きな瞳がジェイを捕らえ、その目に姿を映す。
まるでガラス細工か宝石のような、大きく澄んだ瞳に見つめられると言葉が出なくなってしまう。
不思議な色と輝きを携えた翠色の瞳は、見方によっては微かに色が変わるようにも見える。
人を惹き付けるのは、この瞳のせいなのだろうか。
確かにこの瞳に魅入られると、かのファントムを手に入れた気持ちになるかもしれない。
ローグが勝利の女神に、と錯覚し、我が物にしたがる理由もわかる気がする。
一見すればどこにでもいる普通の少女なのだが、どこからともなく感じられるアイシェを取り巻く空気は不思議なものだった。
それはあの男が言っていた『脅威の力』なのだろうか。
実際、アイシェの使うラグナの能力は桁外れなものだった。
彼女こそ、『能力者』という表現が適している。
こうして見ているとそんな力は微塵も感じさせない。
それともそれは、指輪によって力を封印されているだけであって、本来はもっと違った印象なのだろうか?
少なくともアイシェと別れる前はそんな感じはしなかった。
どっちにしろ、アイシェと出会ったのはほんのひと月ほど前だ。
一緒にいた時間にすれば、一週間にも満たないかもしれない。
正直ほとんど知らないに等しかった。

「ジェイ?」
返事のない姿に、アイシェが痺れを切らして顔を覗き込んだ。
「あ、ああ。もう平気だ」
「どうしたの?何か変だよ?」
アイシェは不思議そうに首をかしげる。
「そういえば・・・」
少しためらうようにアイシェが聞いた。
「エド…さんは?」
「ああ…」
ためらった理由を察知し、ジェイは苦笑した。
自分の事よりもエドの事の方が気になるらしい。
「今はジルのおっさんの船で療養してる。蛇香を吸い込んだ量がかなり多かったみたいでな。
でも、もう随分といいらしいぜ?」
「そう…、よかった」
心底安心したようにホッとした顔を見せた。
自分はエドに騙されてあんな目に合ったのに、それでも気にかけ、心配をする。
そんな風にアイシェを育てた家族や村人の人の良さが伺える。
「人の心配ばかりしてないで、自分の心配をしろよ」
「私は大丈夫よ、ほら」
と、笑いながら力こぶを作ってみせる。
ラグナ以外の戦闘能力には乏しいアイシェのそれはひ弱なものだったが、自身の体力は回復してそうだった。
長い間寝ている間に、指輪に吸い取られたラグナの力も回復したようだ。


そんな事を考えていると、ふと指にはめられた指輪が目についた。
プレゼントだ、と言っていた男は、しっかり指輪を左手の薬指にはめていた。
「あのじじぃ…」
チッと吐き捨てるように呟く。
いいように利用された後、利用価値がなくなると虫けらを殺すように消されてしまった彼を哀れだと同情したりもしたが、アイシェにした数々の暴力や厭らしい行為を思い返せば、それは当然の仕打ちだと思ってしまう。
「ジェイ?」
突然の意味不明の言葉に、アイシェが不思議そうに首を傾げ眉を寄せる。
「どうしたの?さっきから、変だよ?」
「何でもねぇよ。それより…」
ジェイはアイシェの左の手を取った。
「これ、本当に抜けないのか?」
そう言って薬指にはめられた指輪に触れる。
指輪をはめた者にしか抜くことはできない、そう男は言ってた。
「何度かやってみたんだけど、どうしても駄目なの…」
アイシェは静かに首を横に振ると、諦めたように目を伏せた。
よく見ると指輪をはめた薬指に赤い跡ができ、少し血が滲み出ている。
外そうと無理やり引いたり回したりしたのだろう。
昨日今日にできた傷ではなかった。
「貸して」
ジェイはそっと細い指に触れる。
軽く指に触れただけで、アイシェの顔が苦痛に歪む。
平気そうにしているが、かなりひどい傷になっている。
このまま無理な力を加えると、それが跡になって残ってしまうだろう。

「────ジェ、ジェイ…っ!?」
アイシェが思わず手を引き戻そうとした。
腕を引いたジェイが、薬指に唇を押し付けたからだ。
滲んだ血を舌が舐め取っていく。
「ジェイ…っ、や…、何で……んっつ…」
アイシェの顔がみるみるうちに真っ赤に染め上がる。
唇を当てチュッと音を立てると、ますますアイシェの顔が真っ赤になった。
「──…っ!!ジェイ…っ!!!」
声が泣きそうだ。

そんな様子を面白がりながら、ジェイは逃れようとするアイシェの細い腕を引き寄せ、滲んだ血を軽く舐め取ると、懐から小さな小瓶を取り出し蓋を開けた。
ツンと薬の匂いが鼻をつく。
「傷に利く薬だ。ちょっとしみるぞ」
そう言って、草色のぬるりとした薬を指の傷にすり込んだ。
「…っ…」
アイシェが顔をしかめた。
指輪と指の間にすり込むように薬を塗ると、軽く指輪に触れてみ る。

(…無理、か…)

ぬるりとした薬の効果で指輪が外れるかと思ったが、回りもしない。
サイズとは違う原理で、指輪が抜けない仕組みになっているようだ。
到底抜けそうな気配がなかった。
「もうこれ以上、無理に外そうとすんなよ。傷だらけじゃないか」
指輪から顔を上げて、アイシェを見た。
「でも…」
小さく呟きながら、困ったように指輪に視線を落とす。


確かに、これがある限りラグナは決して使えない。
無理にラグナを使用すると、命を削ることになる。
ラグナは使えなくても、普段の生活に問題はない。
人々はラグナと共に生活はしているが、実際それを力として使えるものはごくわずかだ。
だがおそらくあの男の口ぶりからすると、またアイシェは狙われるだろう。
そうなれば、他に剣や弓などを扱えないアイシェにとって、自分の身を守る手段といえば、ラグナに頼るしかない。
非力なアイシェにとって、ラグナの力は必須だ。
その事を抜きにしても、そんないわく付きの指輪がはめられているというだけで気味が悪いというのに。
できることならさっさと外してやりたい。



「────何ならわしの斧で、その指輪を叩き割ってやろうか?」


聞こえた言葉にぎょっとして声を振り返ると、入り口に煙管をくわえた姿のジルが突っ立っていた。
「立ち聞きしてたのかよ…」
「な〜に、ちょっと聞こえてきたから手を貸そうと思っただけだ」
その言葉に、ジェイは大きくため息をついた。

いつから聞いていたのだろう。
この様子ではおそらく最初からだ。
どうも聞き耳を立てるというか、盗み聞きをするのはジルの趣味らしい。
はっきりいって悪趣味だ。
2回もそれに気づかなかったジェイはため息をつくしかなかった。


「第一、そんなもんで叩き割ったら指輪どころか、指ごと吹っ飛んでしまうのがオチだろ」
気を取り直して、呆れたようにジルに向き直る。
「そうか?そうならないように慎重にやるぜ?」
そういう問題ではない。
自身たっぷりに言うジルに、ジェイはほとほと呆れたようにため息をついた。
海の男とはこうまでも豪快なのだろうか、頭が痛い。
当事者のアイシェは青ざめた表情でジェイを見上げている。
YESと言えば、この男は本当にやりかねない勢いだ。
その時は指も腕も吹っ飛ぶ覚悟で、望まなければならない。
アイシェがジェイの袖を握った。
その心境を汲み、安心させてやるかのようにクシャっと頭を撫でてやる。
「それにこの指輪は、力では何ともならねぇよ」
「どういうことだ?」
その言葉にジルは眉を寄せ、アイシェが弾かれたようにこちらを見上げた。
「あいつが言った通り、これは指にはめたやつにしか外せないようになってるのは間違いないみたいだ」
「そんなの見ただけで分かるのか?」
「ちょっといいか?」
そう言うと、アイシェの手を取りジルにも見えるように指輪を見せた。
ジルは初めて間近で見る指輪に、興味津々で食い入るように覗き込んだ。
ラグナを制御するという指輪は、全体に文字が刻まれ、中央には黒とも紫ともとれる宝石がはめられている。
それは何ともいえない輝きを秘め、時折不気味に光る。
決してそれは美しいものではなかった。

「聞いた事もなければ、見たこともない指輪だな、こりゃ。しかも文字が彫ってあるが、…何だこりゃ?…見たことがねぇ文字ばかりだ」
ジルはさっぱりわからねー、とお手上げのように頭を掻いた。
「Йμξψφ…、Жηκχω、ωα…ФЭ…」
「何だよそれは?」
「古代文字、“グラフィティ”だよ」
そう言いながら文字を辿るように指でその形をなぞる。
「所々、擦れて読めなくなってるけど…。かなり古いもんだ」
「坊主、読めるのか?」
尊敬と敬意を込めた口調で、ジルが尋ねた。
「少し、な。
でも、肝心の意味が分からない」
ジェイの言葉に、ジルは思わずこけそうになった。
「それじゃぁ意味がねぇじゃねーか!喜んで損したぜ」
肩をすくめ、両手を上げる。
「でも、読めるだけでもすごいよね」
アイシェが目を輝かせて言った。

数々の遺跡や仕掛けに挑んできたジェイにとって、グラフィティを読んで仕掛けを解くというのは日常茶飯事だった。
だが、一言に古代文字といってもその数は夥しい。
普段は簡単な解説の書物を持って挑むが、今回は予定外の出来事。
そんな用意はない。
「グラフィティに関する書物を見れば、この文字の意味が分かるかもしれないが…」
ただ、自分が持っている書物は限られてはいる。
「こういうのは、たいてい意味を持った言葉なんだ。その意味を解読できたら、指輪をはずす手がかりがみつかるかもしれない。
それかもしくは、指輪をはめようとした張本人、あの赤い目の男を問い詰めて吐かせるか、だ」
「赤い目の男か…。
後者はちょっと難しいんじゃねぇか?第一どこにいるのかわからねー。それなら書物を調べて解読する方が早い。その解読書とやらがあれば、解読できるんだろ?」
「まぁ、すぐに…ってのは無理だけど、時間はかかるけど、おそらく…」
「そうか。それならそのグラフなんたらとやらを解読する書物を手に入れて、解読すりゃあいいじゃねーか。赤い目の男はそのついでに探せばいい。解読した上で手がかりがつかめなきゃ、その男をとっ捕まえて洗いざらい吐かせばいい。
それをはめた張本人が死んじまってどうなることかと思ったが、少しは希望の光が見えたな!」
よかったな!と、ジルはアイシェの背中を叩くと、アイシェは派手にむせた。
軽く叩いたつもりが、アイシェにとってはきつかったらしい。
「…すまねぇなぁ」
咳き込むアイシェに済まなそうに謝ると、ジルは頭を掻いた。





>>To Be Continued




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