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りくそらたのファンタジー小説おきば。
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LOVE PAHNTOM第3章 月のない夜-1-  

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第3章 月のない夜-1-

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アイシェ達一行は昼の刻を告げる鐘の音の中、トロイの港を出港した。
目立つので見送りはいらんというジルの指示は完全に無視され、盛大な見送りとなった。
アイシェに恋焦がれていたクルー達は派手に涙を流し、もう二度と会うこともないかもしれない少女にキスや抱擁を求める。
それを丁重に断り、アイシェは笑顔で別れを告げた。
首に巻かれた山吹色のリボンが時折、強い風に舞いそうになるのを手で押さえながら、いつまでも港から手を振るクルー達に大きく手を振った。
村に帰れば、もう二度と会うこともないであろう人々や港を名残惜しみながら、陸地が地平線の向こうに消え行くまでアイシェはいつまでも甲板から離れなかった。


トルハーンの影響で、クロスロードへの立ち入り制限が行われる中、船は航路を西へ取り、国境を越え、ルキア王国の北西の港マオを目指す。
そこからロードを迂回し、風の渓谷へと向かう。
共に船に乗ることを決めたジルとリリは、マオで必要な物資を調達した後、そのまま船を乗り換えてテリウスに戻る予定であった。
「この人は鉄砲玉ですから。一度飛ぶと、自分では二度と戻ってきません。だから私もついていきますよ?それが私の仕事ですし」
と、自国の船で戻るのはつまらんというジルに付き合って、リリも船に同行した。
うるさいやつがついてきたと、眉根を寄せて渋っていたジルも、何んだかんだといっても頼りになるリリには頭が上がらないらしい。
そんなふたりの様子に和まされながらも、穏やかな天候に恵まれ、航海は順調であった。



□□□□□□


夕刻、アイシェは甲板へ出て涼を取っていた。
遮るものが何もない甲板の上で昼間は照りつけるような日差しも、太陽が地平線へ沈む頃には風も冷たくなり、肌寒くなってくる。
突如吹き付ける突風に身を震わせながら、アイシェは手を擦り合わせた。
時折、左手の薬指にはめられた指輪が鈍く輝き、そのたびにアイシェはゾクリと身を震わせる。

────…ひどく体が疲れる気がする。

ラグナを使いさえしなければ害はないような事を聞いたが、それは確かではない。
指輪をはめてからずっと、誰かに見られているれているような違和感がある。
気のせいだと自分に言い聞かせてはみるが、不安はそう簡単には取り払えない。
せめて誰かに相談したかったけれど、確信もないのに不安を煽るような発言をするわけにはいかない。
もうこれ以上、心配をかけたくない。
それにジェイとはあれ以来、言葉を交わす事がなかった。
ずっと避けられたまま、顔を合わせるといえば食事の時ぐらいだ。
それ以外はほとんど部屋にこもって出てこない日が多く、それでいて夜は遅くまで明かりを灯して何かをしている様子だった。
このままでいいのだろうかと思い悩む日々を過ごしながらも、何もできない自分に苛立ちながら、気がつけば港を離れて6日ほどが過ぎていた。


「…どうしよう…」
アイシェは波立つ水面を見ながら大きなため息をついた。
このままだと言葉を交わすこともないまま、港に着いてしまう。
今はまだジルやリリが一緒だが、港から風の渓谷まではジェイとふたりきりだ。
このままではいけないと思いながらも、時間が経てば経つほど、きっかけがつかめない。
話さないからといって、一緒に行く事を諦めたわけではないらしい。
その証拠に、奪われたファントムは未だジェイの手元にある。
アイシェはまた大きなため息をついた。


と、突然。
誰かに背後から腕をすくわれた。

「…きゃぁっ!?」
弾かれたように振り返り、勢いよくそれを振り払う。
突然の出来事に波打つ胸を落ち着かせながら、その主を振り返ると、どんぐり眼で目を見開いてこちらを見つめる漆黒の瞳と視線がぶつかった。
「あ…」
知っている顔だと気付き、口をあんぐりと開ける。
「わりぃ…」
想像以上の反応が返ってきたことに驚いたジルが、でかい図体を一瞬強張らせてこちらを見下ろした。
「脅かすつもりはなかったんだけど」
バツが悪そうに頭を掻いた。
「なんだ。…びっくりした」
知った顔に安堵すると、アイシェはホッとため息を漏らし、
「どうしたの?」
と、笑顔を作って、自分よりもはるかに高いジルを見上げて小首を傾げた。
「海に飛び込んでしまいそうな雰囲気だったんでつい、な」
「私が?」
大きな翡翠の瞳をますます大きく見開いて、まさか、と小さく笑う。
「だよなぁ。驚かせて悪かったな」
自分の心配が思い過ごしであった事に安堵のため息をつきながら、ジルは心底すまなそうに頭を掻いた。
「だが、こんなところにいたんじゃ海に飛ばされちまうぞ?」
いくら風が強いからといってそんなはずはない、とアイシェは苦笑する。
「海をなめちゃいけねぇ。
激しい波にぶつかったり、岩場に乗り上げる時もあるんだ。そんな時に手すり付近にいたら飛ばされたり誤って海に落ちたりする時もあるんだぜ?むやみにひとりで近づかない方がいい」
ジルの言葉にアイシェは息を飲んだ。
こんな海の中に放り出されたらひとたまりもない。
ましてや自分は泳げない。
海に落ちたら命の保障はないだろう。
考えるだけでもぞっとする。
「まぁ、よほどのことがない限りそんな事にはならねーがな」
そう言って安心させるかのように、アイシェの頭の上にそっと手を置いた。
暖かい大きな手のぬくもりが心地いい。
祖父ガランが昔こうやって頭を撫でてくれたことをふと思い出す。
もうすぐそのぬくもりと再会できると思ったら、自然に心の中が温かくなる。
不安な要素もたくさんあるが、やはり故郷に帰れるとなったら胸が躍らないわけがない。



「船には慣れたか?」
「うん」
「そうか、そりゃーよかった。嬢ちゃんも船に乗るのは2度目だからな」
そう言ってジルは煙を空に向かって吐いた。
煙はすぐに風に巻かれて夕刻の空に流れていく。

「あの…」
「あん?」
「聞いてもいいですか?」
「わしのお頭で答えられることだったら、何でもどーぞ」
ジルは手すりにもたれ、体を預けると、煙管を口に咥えこんだ。
食べている時と寝ている時以外、ジルが煙管を口にしていないのは見たことがない。
かなりのヘビースモーカーだ。
体は平気なんだろうか、とそんな事を頭の隅で考えながら、アイシェは話を切り出した。
「テリウスってどんなところですか?」
「…わしの国か?」
不思議そうに聞き返すジルに、アイシェは大きく頷いた。
ひとりで旅に出ようと決めた際に、目的地として候補に上げていたのがジルのいた国テリウスだ。
「あ〜…。
ひと言でいえば、自由な国?ってところか。こっちの大陸と比べて島国だから他国の干渉とかあまりねぇ自由な国だ」
故郷を懐かしむ様な目で遠くを見つめながら呟く。
「飯も旨いし、美人も多いぞ?」
いい国だ、と頷いた後、煙を大きく空へと吐き出すと、
「またひとりで行こうとか考えてんのか?」
真剣な表情でこちらへ向き直った。
アイシェはすぐさま首を横に振る。

もう、ひとりで行こうとは思わない。
あんなジェイを見たら、自分の為に必死で止めようとしてくれた彼を思ったら、それはできない。

「ただ、聞いてみたかっただけ」
「…ふぅん…」
ジルは何か考える風な呟きを漏らした後、
「少しは頼りにしてやれや?」
そう言って煙を空へ吐いた。
「…え?」
「坊主のこと。頼りにされないってのは結構つらいぜ?」
煙が風に流れて瞬く間に、空へ還る。
その様をぼんやりと見つめながら、思いつめたような表情でアイシェも空を見上げた。


頼りにしてないわけではない。
むしろ側にいればいるほど頼ってしまう、そんな自分が嫌でたまらない。
危険を顧みず差し出してくれる手がたまらなく苦しい。
自分は何一つとして、ジェイにしてあげられないというのに────。


「男はな、いくつになってっても格好いいところを見せたいもんだ。それが好きな女なら、なおさらな」
ジルがニカッと白い歯を見せて笑った。
「…それは────」
違う、と言いかけた言葉を飲み込む。
ジルもリリもジェイとの仲をひどく勘違いをしている。
どういう関係だ、と聞かれると返答に困る。
もちろん恋仲ではないし、友人と言い表わせるほど密な関係でもない。
ただ偶然がきっかけで出合った他人に等しいと言っても違わない存在なのに────。



「いつから話してないんだ?」
いつもストレートで前振りのないジルが、珍しく一呼吸置いて話し出したのは自分に気を使っているのだろうか。
ふと、自分よりも随分と背の高いジルを見上げると、珍しく真面目な表情でジッとこちらを見据えていた。
「謝りたいんだろ?」
表情を変えず、そっと呟く。



ずっと謝りたかった。
黙ってひとりで行こうとしたことも、ジェイを傷つけたことも。
いつだってジェイは全力でぶつかってきてくれたのに、それに答えようとしなかったことも。
もう嫌われてしまったのではないか。
話しかけても聞いてくれないのではないか。
顔も合わせてくれないのではないか。
怖かった。
もう二度と、自分に笑いかけてくれないかもしれない。
怖くてたまらなかった。


「言葉にしなきゃ伝わらねぇことだって、たくさんあるんだぜ?人間だからな」
ジルは器用に煙管を口に咥えると、
「これ」
ごそごそと懐を弄って、そこから小さい袋を取り出した。
「坊主に調達しておいてくれと頼まれたもんだ。渡してくれるか?」
「…私が…?」
弾かれたように見上げた顔を曇らせる。
「でも…」
ジェイは会ってくれないかもしれない。
食事の時以外、彼はずっと部屋に閉じ篭ったままだ。
「坊主はあんたの事を避けてるわけじゃねぇよ。あいつなりによりを戻すきっかけを探してんだ。それがこれだよ」
そう言ってアイシェの手を掴むと、それを無理やり握らせた。
「後は自分の目で確かめるんだな」
ニッと笑うと、真っ白な歯が覗く。
「じゃあな」
坊主によろしく、と片手を上げて船内へと足を向ける。
「あ…っ、ジルさん────!」
その背を思わず呼び止めた。

「あん?」

「────ありがとう…」

ジルがくれたきっかけを握りしめて、アイシェは笑う。


「…あんた、そうやって笑ってるほーがいいぜ?」
「え?」
「そうやって笑ってる顔の方がいい。思いつめたような顔は、似合わねぇよ。せっかくの可愛い顔が台無しだ」

そう言われてみれば、自分はずっと笑ってない気がする。
人前で笑って見せても、いつも心の奥からは笑っていなかった。
あの日から、ずっと笑っていない。
それをジルは見抜いていた。
この人は何も考えてなさそうに見えて、ちゃんと物事を見ている。
それが将校として上に立つ者の資質なのだろうか。


「それ、ちゃんと渡せよ?んで、仲直りしろ!」
見ちゃいられねーよ、とめんどくさそうに片手を振りながら、そのまま船内へと消えていった。
「…うん、わかったよ。ありがとう…」
アイシェは意を決したように強く頷く。
ジルが作ってくれたきっかけはささやかだけど、アイシェに勇気を与えてくれた。









>>To Be Continued



| LOVE PHANTOM 第3章 | 22:34 | comments(9) | - |
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| - | 22:34 | - | - |
こんにちは!
こっちの更新に気づかなくて、すみません(汗)
大好きなお話なのに〜不覚!

アイシェ、ちゃんと話せるかな、どきどき。
ジェイってば、またアイシェを襲わないかな(注意:期待ではなく心配です?)
…じょ、冗談ですよ!

さて、いよいよ出発。
少しの不穏な空気を感じながら、二人にどんな試練が待ち構えているのか、ジェイに余裕は戻るのか(笑)
ものすごく、続き、楽しみにしています〜!
新イラストも、かわいくって、ステキ♪
| 史間 | 2007/06/16 10:39 |
★☆★史間さんへ★☆★
こちらのおはなしは密やかに進行中なので、読んでいただけるだけでもとても嬉しいです!!
そういえば、史間さんのはじめてのコメントはこっちの小説の感想でしたよね。大好きと言ってもらえて、心がホクホクです!
そして、コメントに爆笑!
嗚呼、やっぱり余裕のない男共…って感じで、お恥ずかしい(笑)でも、書いてる側としては、そういうシーンが楽しかったりします(笑)えへへ。
これからもふたりの間には試練がたっぷりです〜。ジェイが平常心を保ってられると、いいな…(笑)
| りくそらた | 2007/06/17 22:07 |
こンにちゎ☆★
初めてコメントしますが、実ゎこっそり何回も読んでたりするンですょね!!笑ッ
りくそらたさンの小説大好きなンですよッ!!
この小説もですし、「魔法のコトバ」っていう小説も大好きなンですょ↑↑
めっちゃ感動する話なンで・・・
ここの小説も凄い読んでて楽しいンですよ。
だヵら更新頑張って下さいD((●゚c_゚●))b
| 苺 | 2007/08/07 14:49 |
★☆★苺さんへ★☆★
はじめまして。いらっしゃいませ〜。

うわ〜。嬉しいお言葉をありがとうございます!
まほコトがようやくひと段落ついたので、夏の間にこちらの方も1、2話ぐらいはアップできるように執筆中です。まほコトとジャンルが違うので頭を切り替えるのが大変です(笑)
こちらはマイナーなお話なので読んでいただけるだけでも嬉しいです♪ありがとうございました〜!
| りくそらた | 2007/08/07 16:05 |
少しずつでもする更新を見逃さずにしっかり読ませていただきます。
ジャンル違うと困りますょネ!!
でも頑張ってください。
いつでも見に来ますから、焦らずいい小説お願いします!!笑ッ
プレッシャーですかね・・・。

| 苺 | 2007/08/08 12:06 |
★☆★苺さんへ★☆★

>プレッシャーですかね・・・。

いえいえ(笑)コメントはどんな形でも励みになります!(荒らしは別として…)
頑張りますっ♪ありがとうございました〜!
| りくそらた | 2007/08/08 21:28 |
プレッシャーも時にゎ良いンぢゃなぃですか?!

荒らしの人ゎこの小説読む資格なぃヵら!!
こンな些細なコトバでも頑張ってくださぃナ↑↑
| 苺 | 2007/08/08 22:59 |
魔法のコトバから入ってきました☆
このお話も大好きです。2日かけてやっとここまで読めました!!続きがすごく気になる・・・。2人が仲直りしてくれる事願ってます☆
イラストもすごくかわいくて、お話にすごくあってて大好きです。頭でアイシェ達をイメージしながら読んでました。
これからも楽しみにしてます☆
| mayuta | 2007/08/09 10:34 |
★☆★苺さんへ★☆★
あはは(笑)元気が出ました。ありがとうございます〜。
本日、久しぶりに続きをアップしました。蒼吾からジェイへ頭を切り替えるのは大変です(笑)


★☆★nayutaさんへ★☆★
うわ〜。こちらまで足を運んでいただけてとても嬉しいです!!
『LOVE PHANTOM』は『まほコト』の爽やかさと違ってかなり甘めにしています。お恥ずかしいぐらい…(汗)
懲りずにお付き合いいただけると嬉しいです〜。

相方のイラスト。私も大好きです!ルックスはましろと蒼吾よりもこっちの方が好きだったりします。えへへ。
| りくそらた | 2007/08/09 11:03 |









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