RS FANTASY

りくそらたのファンタジー小説おきば。
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LOVE PAHNTOM第3章 月のない夜-6-
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第3章 月のない夜-6-

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ふわふわとした温もりに包まれて気持ちが落ち着いたからか、久しぶりによく眠れた。
体が羽根のように軽く、頭もすっきりとしている。
ぽっかりと丸く切り取られた窓から見える空は、昨晩の暗雲が嘘のような快晴。
体を横たえたままそれを見上げると、雲が切れるように流れていくのが見えた。
隣にはジェイの寝顔。
深い輝きを湛えた蒼の瞳は緩く閉じられたまま、すーすーと規則正しい寝息が聞こえてくる。
額に掛かった癖のない琥珀の髪が、サラリと流れ落ちた。
それをそっと指で払うと、ジェイが「んー…」と寝ぼけたような声を上げた。
よく眠っている。
寝顔を間近で見ていると、アイシェの中で優しくこそばゆいような気持ちが膨らんだ。
自分の肌からも、彼の肌からも、同調した体温に暖められた香りがゆらりと漂っている。
人のぬくもりがこんなにも安心するものだなんて―――。
アイシェはゆっくりと目を閉じながら、あまりの幸福さにまた泣きたくなった。

ベッドから抜け出そうと体を起したら、重心がそのまま下へと返された。
がっちり腰にまわった腕に捕らえられていることに気付き、そっとそれを外そうとしたら、その手が伸びてきてそのまま引き戻された。
「…ジェ…―――」
身体を押し倒され唇をそっと押し当てられる。
優しい感触が唇を包み、ベッドの中で温かさを保っていたらしいジェイの唇が、熱を分け与えてくる。
導かれるままに口付けをし、何度も何度も降ってくるキスを、アイシェは次第に覚えていった。
ジェイのキスの仕方を身体に、心に、刻んでゆく。
引き寄せられて、指に、肩に、鎖骨に、乱れた胸元に。
アイシェの白雪の肌に淡い印がついていく。
口づける箇所を変える度、アイシェの口から甘く切ない吐息が漏れた。

(―――朝っぱらから、何やってんだ、オレ…)

丸く切り取られた船窓から覗く青を横目にしながらジェイは思うのに、それでもキスは止まらなかった。



□ □ □



それから数日、穏やかな時が過ぎていった。
数日前のぎこちなさが嘘のように、安らぎと幸福に満ちた日々。
ジルやリリといるのも楽しかったし、陸の上では体験できなかったことや、感動もたくさん味わった。
心配されていたトルハーンの影響も受けることもないまま、平穏で穏やかな航海が続いていた。



事件が起こったのは、陸から離れて十日ほどたった頃だった。



いつものように夕飯をとる為に、アイシェ、ジェイ、リリの三人は船内の小さな食堂を訪れた。
四人がけの小さなテーブル席に座り、頼んだ料理が来るのを待つ。
「ジルさん、どこへ行っちゃったのかな…」
椅子に腰かけながらアイシェが、辺りを見渡した。
「またその辺の客を捕まえて、賭けでもやってるんじゃないのか?」
特に気にする様子もなく、ジェイは注文を取りに来た男に料理を頼んだ。
普段ならジルとリリも一緒に、四人で食事を取るのだが、この日はジルの姿が見当たらず、三人で食事を取ることになった。
ジルはじっとしていられない性質で、普段から人を見つけては話しかけたり、意気投合した客とギャンブルを始めたりしていたので、こういう日は珍しくはなかった。
「また、いつもの悪い癖ですよ」
「そのうち食べに来るだろ」
「う、ん…」
アイシェは少し心配そうに辺りを見回したが、ジルの姿は見当たらなかった。


運ばれてきた夕飯を取っていると、しばらくして船内がざわざわとざわめき出した。
「何だろ?」
アイシェが不安そうに辺りを見回すと、男達が何人か甲板の方へ走って行くのが見えた。
外で何かあったらしい。
「たぶん俺らには関係ねぇよ」
ジェイはたいして気にする様子も見せず、食べていた料理を口に運ぶ。
「あ、あんた達!」
テーブルの横を通った男が、三人に気付いて足を止めた。
「?」
ジェイとアイシェは顔を上げる。
見知らぬ男が、三人の顔を確認するように見比べた。
「あんたらあの、ジルとかいう色黒のおっさんの連れだろ?」
「…アンタは?」
「俺はただの顔見知りだ。あんたらの連れに、ギャンブルに混ぜてもらってたから、顔は知ってるんだ。アンタらと一緒にいるのもよく見かけたし…。そのおっさんがどうも、外でもめてるらしいぜ」
「何だって?」
ジェイが眉を寄せた。
「どういう事ですか?」
リリが苦い顔をしたまま、男を見上げた。
「何でも操舵室に乗り込んで、操縦させろ!とか何とか叫んでるらしい。新手のハイジャックか何かか?」
男の言葉に、ジェイとアイシェは顔を見合わせる。
「何でまた、そんな騒ぎを…」
リリが頭を抱えた。
「お酒でも飲んでるのかな?」
「とにかく。どえらい騒ぎになる前に、止めに入った方がよくないかと思って、アンタらを探してたんだ。早く行ってやった方がいい」
「…ったく!」
そう言ってジェイはめんどくさそうに立ち上がると、
「とりあえず行くか」
そう言って食堂を出た。



□ □ □


甲板に出ると、かなりの人だかりが出来ていた。
その中心に、ひとりの男を3人がかりで押さえつけている様子が見えた。
「―――だから!わしに舵をよこせって言ってんだ!!!」
男達に押さえつけられながらも、荒々しく叫ぶその姿は、まさしくジルだった。
ハイジャックだと間違えられてもしょうがないくらい憤り、今にも飛びかかってきそうな勢いと剣幕で捲し立てる。
「…やっぱり、ジルさんだよ」
アイシェが不安の色を浮かべて、ジェイの袖を引いた。
そのまま駆け寄ろうとしたアイシェの腕を、ジェイが引き止めた。
「どうして?」
大きな瞳に困惑の色を浮べ、見上げてくる。
「駄目だ。行くな」
「だって。ジルさんがあんな事に…。助けなきゃ…!」
「待てって。
おっさんが何で、こんな事をしようとしたか、経緯をもう少し聞いてみねーと。知り合いだという事をこんな大勢の場でばらしたら、オレらまで仲間だということで捕まりかねない」
「でも、このままじゃジルさんが…」
「自業自得ですよ」
すぐ側で、リリが溜息を落とした。
その横顔は、心底呆れている。
「別に見捨てようとか、他人のふりをしろとか、そういってるんじゃない。状況が状況だ。立場が不利な状態で名乗りを上げたら、俺らまで捕まってしまうぞ。一緒に捕まってしまったんじゃ、どうしようもなくなる。第一、おっさんにも何か理由があるかもしれないだろ?」
「理由があるにしても。どうしてこう、後先考えずに動くのでしょう、あの人は…」
できればこのまま置き去りにしたい。
リリの表情から、そんな雰囲気が滲み出ていた。
上司のあのような姿を目にしながらも、取り乱さない様子を見ても、こういう事には慣れているのだろう。
きっとリリにしてみれば、日常茶飯事だ。
胸中を察する。
「でも……」
「とにかく今は駄目だ。…しばらく様子を見よう」
落ち着かない様子のアイシェをなだめるように、背を押して人だかりの少ない場所へ移動した。


「―――だから!今すぐ進路を変えろって言ってるだろうが!それができねぇんなら、わしに舵を渡せ!!」
「なぜ、進路を変えなければならんのだ?今のところ、何も問題はない」
髭を生やしたやや小太りな男が口を開いた。
身形と雰囲気からして、この船の船長らしい。
「さっきから何度も言ってんじゃねーか!
いいか?この船は魔の海域へ足を踏み込んでる。このまま船を進めると、とんでもないことになるぞ!?今すぐ進路を変えろ!!」
「魔の海域って…」
「シッ」
不安げに見上げたアイシェの言葉をジェイが遮る。
聞きなれない名前に不安を感じたのは、アイシェだけではなかった。
人だかりがざわめく。
「魔の海域というのは、あの亡霊島があると言い伝えられてきた海域か?
馬鹿馬鹿しい。あの島は過去に何度も、探検家や海軍、海賊をはじめ名乗りを上げた者達が捜索したが、島らしきものは一度たりとも確認された事がない。迷信だ」
馬鹿にするように鼻を鳴らし、息をついた。
「確認はされてねぇが、その海域で数々の船が行方知れずになっているのは事実だ!それを知らないわけじゃねぇだろう!?」
「…ただえさえ、トルハーンの影響で航海が遅れているんだ。これ以上、馬鹿な迷信に付き合ってる暇はない。手を焼かせないでくれたまえ」
「問題が発生してからじゃおせーんだよ!それが起こる前に回避するのがキャプテンの務めだろ!?てめーらの目は節穴か!!」
「話にならんな」
「何だとっ!!!」
「ここへ来る前に、かなりの酒を飲んでいたそうじゃないか。随分と海を熟知した風だが、アルコールで思考がにぶっているのではないのかね?」
「わしは酒を飲んでも、酒に飲まれることはねぇ!!」
「それは酒飲みのセリフだな。連れて行け」
「おい!!わしの話をちゃんと…っ!!!」
「酔いが醒めるまで、少し頭を冷やすといい」
「クソがっ!!!」
ジルはそのまま、男達に抱えられるように船内へと連れて行かれた。


「ジェイ…」
すがるようにアイシェが見上げた。
不安に顔を曇らせる。
「わけありっぽいな」
「そうですね…」
リリは何やら考える風に、ジルが連れて行かれた一点を見据える。
「ジルさんを助けてあげて」
「…アイシェは部屋に戻ってな。ったく、何をやってんだか。世話の焼けるおっさんだぜ」
ジェイは大きくため息をつくと、船内へ消えていった。






>>To Be Continued
| LOVE PHANTOM 第3章 | 14:22 | comments(2) | - |
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| - | 14:22 | - | - |
お久しぶりなのにいきなりです…
リリの呆れっぷりにやられました!
嬉しいー!願いが届いたー!続き楽しみにしていましたよ〜♪
ジェイったら、すでに朝から我慢できていない(笑)あの番外編の後だから、余計にニヤニヤしてしまいました!

んでジル!!
魔の海域って本当ですか!?ジルが海のことでデタラメを言うわけないですもん!ジェイ、なんとかしてー!(悲鳴)
続きも楽しみにしています><
| 史間 | 2007/12/14 01:07 |
お久しぶりです☆
先にコチラに訪問!楽しみにしてくれていたのが、伝わりました〜(笑)

ジェイ。相変わらず恥ずかしいヤツですみません。相方いわく「ジェイはエロ大魔王だ!」とか…(笑)
それでも支持率が大きいのは、相方のイラスト効果?あのきらりんスマイルにやられたのかな…?と思ったりしています(それともエロイところが受けるのか…笑)。
生殺し状態のジェイが可哀相なのですが、ここから本題に移ります。
冬休みは、こちら1本に絞る予定。また楽しみに覗いてみてくださいね♪
| りくそらた | 2007/12/14 09:02 |









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