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りくそらたのファンタジー小説おきば。
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LOVE PAHNTOM第4章 帰郷-4-
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第4章 帰郷-4-

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混沌とした世界から覚醒するかのように、アイシェは重い瞼をゆっくり開いた。
ぼんやりと霞む視界に見えたのは、赤土を塗り固めたような天井。
部屋の灯りは最低限まで落とされ、自分が横たわっている寝具のすぐ脇にあるランプがぼんやりとした光を放っていた。
いつの間に陽が落ちたのだろう。
天窓から見える空は暗黒の闇に包まれ、輝く星すら見えない。
身体をゆっくりと起こすと、ツキンと頭の芯が痛んだ。
この痛みはよく知っている。
幻のラグナを脳に送り込まれたことで引き起こされる、副作用のようなものだ。
その覚えのある痛みで、次第に記憶がはっきりとしてくる。
見渡した部屋にある物は、どれも見覚えのあるものばかりだった。
麻を編み込んだ寝具の掛け布も、古びた木彫りの箪笥も、花の彫刻をあしらった大きな鏡も。
どれも自分が長年使ってきたものばかりだ。

(私…帰ってきたんだ……)

そこは間違いなく、アイシェの部屋だった。
リンカーンのラグナの力で眠らされ、その間に運び込まれた。
もう二度とは出られない鳥かごの中へ。
あんなに帰りたかったはずなのに、素直に村への帰郷を喜べない。
村に戻るのが嫌ではない。
自分が戻ることで、祖父や長年一緒に過ごしてきた気のいい村人達まで危険に巻き込むのではないか不安で仕方がなかった。
それにもう、ジェイとは会えないのではないのか…と。


「気分はどうだ?」
キィと扉の開く鈍い音と共に、緋色の鋭い瞳がアイシェを見つめ声を漏らした。
どうして勝手に―――と、声を荒げて怒りをぶつけたい心境だった。
けれど、リンカーンを責めても仕方がない。
彼は長老である祖父の補佐官として、当然のことをしたまでだ。
何としてでも自分を村へ連れて帰れ。
そう言われて村を出たに違いなかった。
自分がリンカーンと同じ立場であってもそうするだろう。
いつだって逃げ出せる立場にあったのに、それを選らばなかった自分が悪いのだ。

「―――目が覚めたか?」

聞き覚えのある低く穏やかな声色に、アイシェは弾かれるようにそれを振り返った。

「おじいちゃん…―――!」

扉の入口にはずっと会いたかった人物が立っていた。
白髪に白い眉、皺の寄った細い目尻を優しく下げてこちらを見て微笑んでいる。
ほんの数ヶ月会わなかっただけなのに、もう何年も会ってなかったかのように思える。
無理もない。
祖父ガランとは、生まれてこの方、誘拐事件で村の外に出るまでは顔を合わせなかった日はなかったのだから。
「リンカーン。アイシェに何か身体の温まる飲み物を入れてきてやってくれないか?」
「…わかりました」
リンカーンは低く声を漏らすと、軽く頭を下げて家の調理場へと向かった。
その姿が見えなくなるのを確認してから、ガランは扉をぴしゃりと閉め、アイシェの側に歩み寄った。
「体は平気か?」
皺が刻み込まれてゴツゴツとした、けれど温かい手がそっと頬に触れた。
アイシェの存在を確かめるように、そして落ち着かせるように優しく撫でてくれる。
いつだってそうだ。
寂しいときや悲しい時、辛い時はいつもこうやって祖父に頭を撫でてもらった。
早くに両親を亡くしたアイシェを大事に守り、育ててくれた大きく力強い手。
アイシェの不安や悲しみを吸い取ってくれる魔法の手。
ちっとも変わらない。
優しく頭を撫でてもらうと気持ちが落ち着いて楽になった。

「…おじいちゃん…私…―――」

さぞかし心配したのであろう。
しばらく見ない間に、随分と老け込んだのではないか。
気苦労と心配は一気に老いを呼び込む。
やはり戻ってきて正解だったのかもしれない。
「怖い思いをしたな。もう大丈夫じゃ。この村にいれば、何も心配することはない」
「…おじい、ちゃん…私……っ」
伝えたいこと、話したい事はたくさんあった。
けれど声にならない。
何ともいえない熱いものが押し寄せるように込み上げてきて、言葉は嗚咽になって止め処なく涙が溢れた。
溢れて溢れて、止まらなくなった。

「もう、大丈夫じゃ」

肩を震わせてしゃくり上げるアイシェをガランは優しく包み込むように抱きしめた。
ふわりと。
御香と天然の土や風の入り混じったような祖父独特の匂いがアイシェを包み込み、安堵にますます涙が溢れる。


「…う……ぁぁああ……っ……っ」


全てを吐き出すように声を上げて、ただ。ひたすらに泣いた。



しゃくり上げるように嗚咽を漏らして震えるアイシェの体を。
ガランはまた、強く。強く。
抱きしめてくれた。






>>To Be Continued


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