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第2章 ファントム-3-
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「何、ちんたらやってんだ!!」
突然、天窓を割って飛び込んできた男は、偉そうに高いところからこちらを見下ろした。
無精ひげを生やし、ぼさぼさの髪にボロボロの身なり。
格好こそまるで浮浪者のようだが、闘志を燃やす鋭く藍い瞳や貫禄のある立ち居振る舞いは、まるで救世主のように見えた。
「…あの時の…」
アイシェが声を上げた。
捲し上げられた右腕から覗く、立派な鷹の刺青には見覚えがある。
船の酒場で助け舟をだしてくれた男、ジルだ。
「何で、こんなところに…」
「だから言っただろ? 気をつけろって。わしはちゃんと忠告したはずだぜ?」
そう言うと、大きな体からは想像できないくらい軽やかに天窓から飛び降りた。
「…貴様っ、生きていやがったか!!!」
「残念だったな、ローグ。わしはしぶといんでな。体勢を立て直すには時間がかかったが、そう簡単にはくたばらんよ」
「…ローグ?」
「その男の名前だ」
顔をしかめ嫌そうに赤毛の男を指差す。
「知り合いだったのか?」
「わしはずっと、こいつを追ってたんだ」
そう言ってジルはローグと呼んだ赤毛の男を睨みつけた。
「それより、どうしてここが」
ジルとは船でアイシェを見送った後に言葉を交わして以来、会っていない。
どこで船を降りたのかさえ知らなかった。
「お前さんとその嬢ちゃんが話している時、気になる事を小耳に挟んだんでな。何か匂うと思って見張らせてもらってたんだよ」
やけに親切に付きまとうとは思っていたが、これでつじつまが合う。
ずっと見張られていたのだ。
「そいつ」
「え?」
「トロイの港でそいつに会ったよな? その時に見えたんだ」
「何が?」
「腕のシンボルが。それに俺の嫌いな匂いがプンプンしてやがった」
その言葉にバツが悪そうにエドが左腕を押さえ、チッと舌打ちをした。
「…それ、火傷じゃなかったの?」
エドの左腕の傷。
袖から見え隠れする程度しかわからなかったが、火傷の跡にしてはあまりにも綺麗すぎた。
皮膚が焼けた後の独特な匂いもしなかった。
どうりで触らせようとしなかったわけだ。
「わしは目と鼻はすこぶるいいからな」
「気づいてたなら言ってくれよ!」
「そこまでお人よしじゃねーよ。でもちゃんと忠告はしてやっただろう?」
「オレはてっきり…」
はめられたのかと思った、という言葉を飲み込んだ。
それは勘違いだった事がたった今、証明されたのだ。
「ハッ!! とんだ茶番が入ったが、雑魚が一匹増えた程度だ」
「うるせー! てめーにやられた事は倍にして返すぜ! 覚悟するんだな!!」
そう言うと、
「リリ!!」
ジルの合図でどこから現れたのか、突如人影がジェイの前を横切った。
その影は一瞬で、広間の両端にあった小さな石造を叩き割る。
ツンと嫌な匂いが鼻をついた。
異臭ともいえるその匂いに、思わず顔をしかめる。
「何を…」
「あの石造の中には蛇香といって、闘争心や憎悪を掻き立てる香が入ってる」
見えない煙を払うかのように、ジルが手をひらひらと振った。
「ここの者が強いのは、暗示をかけられて、この蛇香の匂いで操られていたにすぎないのよ」
ジルとは反対側の足元で声がした。
「お、お前…」
たった今、石造を叩き割った人物がすぐ側まで帰ってきていることに驚く。
風のような素早い動きにも驚いたが、何よりもその風貌を見てギョッとする。
肩までの灰色とも銀色とも取れる真っ直ぐな髪を、横だけリボンで結い上げ、顔をすっきりと出した顔立ちは、意思の強さを象徴させるきりっと釣りあがった目鼻立ちをしている。
小さな唇を一文字に結び、手を腰に当てて横目だけでじろりと睨みつける偉そうな態度。
何よりも驚いたのは、ジルの腰の高さにも満たない背。
ずば抜けて体格のいいジルではあるが、それにしても小さすぎる。
小柄なアイシェよりもかなり小さい。
「そいつはわしの相棒、リリィ=ロンだ。通称風のリリ。小さい体で風のように動く」
「…子ども、だよな…?」
しかも女の子だ。
まだまだ親元にいるのが当たり前で、無邪気に走り回っていそうな年頃の少女だ。
「人を見かけで判断しちゃいけねぇ。こいつは見た目以上の働きをするからな」
「…ていっても。この子、十歳かそこいらじゃ…」
「十歳ですけど、何か?」
キッと目だけでジェイを睨みつける。
人を射抜くような鋭い視線に、思わず、うっと言葉を詰まらせる。
ジルがくくっと笑みを漏らした。
「うちの隊は年齢や性別、種族は関係ねぇ。重要なのは実力と度胸、だ」
「あ、ああ…」
半信半疑な表情でジェイは頷く。
信じられない。
こんな小さな子どもを連れて、こんなところに乗り込んで。
ジルとは一体何物なのだろう。
右腕の立派な鷹の刺青。
それを持つ海の男の噂を耳にした事がある。
でもそれは、こんなところにいるはずのない人間の噂だ。ありえない。
しかし、リリと呼ばれた少女の服装。
Vネックのカラーに背中の四角い襟をモチーフにした上着。
あの襟は海の風を切って走る航海士の象徴、セーラーカラー。
胸元に縫い付けられた勲章。
それに印されたラインと星の刺繍は、階級を表す証ではないのだろうか。
「女、子どもだからって馬鹿にしてます?」
リリがちらりとこちらを見上げた。
不満そうな顔で睨みつける。
「言っときますけど、あなたなんかよりは場数を踏んでいますから」
見くびらないでくださいね、と付け加える。
そんなつもりはないが驚きを隠せなかったのは事実だ。
それを表立って出したつもりはなかったのに。
こちらの考えなんてお見通しだ。
「ほら、効果がでてきましたよ」
そう言ってリリが振り返った先に目をやると、部屋にいた兵士達がバタバタとその場に倒れこんでいた。
同じくエドも頭を抱え込むようにしてして倒れる。
蛇香に操られていたというのは本当だったようだ。
「…これで、エドも操られてたのか───」
確かに、部屋に入ってきた時に嫌な匂いがした。
気のせいだと思っていたが、それこそが蛇香だったのだ。
エドがその匂いに気付かなかったのは、もうすでに体に染み付いていたからだ。
「自分の都合のいい方だけに解釈するなよ、坊主。
言っただろう? この匂いは憎悪や闘争心を掻き立てるって。もともと何かに対する怒りや憎しみがなけりゃ、この匂いは無効だ。
蛇香が利いたってことは少なからずも、お前さんに対してそういう気持ちがあったってことだ」
ジェイは床に倒れこんだエドを見つめた。
憎悪をむき出しにして、襲い掛かってきたエドの顔。
兄弟のように長年連れそってきたジェイに殺意を抱くほど、セイラの死は彼に絶望と深い悲しみを与えた。
そこにまんまと付込まれ、ローグによって憎しみと闘争心を植え込まれた。
セイラを失くし、生きる希望を失ったエドは、その怒りの矛先をジェイに向けた。
それを受け入れざるを得ないほど、エドにとってセイラの存在は大きく、そうでもしないと生きて行けなかったのだろう。
ジェイだってそれは同じだ。
ひどい絶望と悲しみ、自分の犯してしまった過ち。
なぜあの時、セイラを救えなかったのだろう。
何度思い出しても悔やみきれない後悔の念。
それでも自分にはアイシェがいてくれた。
セイラの死に直面し、どうしようもない悲しみと自分の無力さに絶望していた時。
アイシェが優しく抱きしめてくれた。
ひとりでいれば抱えきれなかったであろう悲しみを、包み込んで溶かしてくれるような温かさを、今でも確かに覚えている。
アイシェを助けたつもりが、彼女に救われた。
アイシェの支えがなかったら今頃、エドと同じような道を辿っていたかもしれない。
人間はひとりでは生きていけない弱い生き物だ。
同じ絶望を味わいながら、明暗を分けた二つの選択肢。
占いに長けたセイラ。
彼女が見えた未来にはそれが映っていたのだろうか───。
「さて、と」
蛇香の効果がなくなった事を確認すると、ジルがあらためて男に向き直った。
「ここに来る前に、島にあった蛇香は全部ぶっ壊させてもらったぜ? それとな、外は押さえさせてもらった。
な〜に、簡単だ。もともとは半分以上がうちのクルーだ。いろいろと過酷な労働を強いられてたようだが。蛇香が利かなくなった今、お前に付く理由はないからな」
その言葉に、ジェイは目を丸くする。
いつの間にそんな手配をしていたのだろう。
人質を捕られていたとはいえ、ローグを入れても数人ほどの相手になすすべもなかった自分とは比べものにならない。
「言っておくが、お前の部下も半分寝返ったぜ? てめーのやり方には付いて行けないんだとよ」
「…何だと?」
男の片眉がピクリと上がった。
「当たり前だよな? お前のような独裁主義者に、ついて行けるはずがねぇよな」
ジルは貫禄たっぷりの表情で、男を睨みつけた。
怒りを露にローグの握りしめた拳がわなわなと震える。
(何なんだ、この威圧感は────)
身なりこそ浮浪者のようだが、ジルの堂々たる態度はただの船乗りとは思えない貫禄と威圧感がある。
「…おっさん、あんたは一体…」
聞かずにはいられない。
右腕に鷹の刺青のある男の噂。
それが確かだというのならば───。
「おっさんおっさんって、失礼な人ですね」
ため息混じりにリリが呟いた。
「本来なら、めったにお目にかかれないようなお人ですよ」
そう言って口の端に笑みを乗せる。
その言葉で確信した。
「じゃあ、やっぱりあの右腕の鷹は────」
「彼はジルバード=G=ブラッド。
テリウスの海軍将校です────」
「────!!」
ジェイは目を大きく見開いた。
ただの船乗りにしては貫禄があり、カリスマ性もハンパなかった。
その理由がはっきりとわかった。
海に出れば右に出るものなしと歌われたあの、ジルバード=G=ブラッド。
その本人が目の前にいる。
ジェイは体の底から震えが湧き上がるのを感じた。
こういうのを武者震いというのだろう。
「これを」
耳打ちするようにリリがそっと何かを手渡した。
薄い布に包まれた硬い感触。
そっと布を開くと立派な鞘に収められた一本の短刀が出てきた。
「ダガーです。殺傷能力は落ちますが、ないよりマシでしょ」
その言葉にフッと笑みがこぼれる。
「何ですか?」
「いや…。こっちの方がありがたい」
かなり使い込まれたそれは、鞘から抜き出すとキラリと青白く光った。
手入れがほどこされた立派なものだ。
上等な彫刻が刻まれた柄は、驚くほどしっくりと手の平に収まった。
手負いの状態の体には、肩から振り上げる剣よりも、手首の動きだけで使える短刀やダガーの方が随分負担が軽い。
「サンキュー」
これで懐に飛び込める。
「さて、ローグさんよ。逃げ場がなくなったけど、どうする?
この場にいるたった数人の部下と一緒に戦って心中するか、それとも命乞いをして牢獄の中で惨めに生き延びるか。選択肢はふたつだ」
ジルは貫禄たっぷりな余裕の笑みを浮かべながら、じわりと歩みを寄せた。
「ま、どっちも惨めな最後だよなぁ?」
そう言ってじわりと間合いを詰める。
「チッ!!」
男はバツが悪そうに舌打ちをすると、側にいたアイシェの体を引き寄せた。
キャッっと、小さな悲鳴が上がる。
「この女の命がおしけりゃ、そこを通すんだな。かわいい顔に傷がつくだけじゃ済まないぜ?」
口の端をニヤリと引き上げ、腰元から抜いた短刀の刃先を喉元に当てる。
「俺が逃げ延びるまで、誰一人そこを動くなよ?」
アイシェを盾に、男はじりじりと退路を取る。
抱えられ、喉元に刃を突きつけられて身動きもできない上に、術を使うラグナはおろか、体を支える力さえも残っていないアイシェには、そこから逃げ出す力はなかった。
「アイシェ…っ!!」
「来るなっ!!それ以上、近づくんじゃねぇ!!」
「…くっ」
なおも首筋に短刀を突きつける男に、これ以上近づくのは危険だ。
人の命なんて何とも思っていないようなやつだ。
いくら気に入った娘とはいえ、自分の命の為なら平気で傷つけるだろう。
「やっぱり捕虜を救出することが、先でしたね」
だから言ったでしょう? と、特に驚いた様子も見せずリリが呟いた。
「計算外だ」
「計算なんてしていないでしょうが。いつも思いつきとはったりで動いちゃうくせに」
ふたりには焦りや憤りが見られない。
どこまでも余裕で冷静だ。
「考えんの、苦手なんだよなぁ」
「それが人の上に立つ者のセリフですか?」
情けない、とリリがため息を漏らす。
「…要は、無事救出できればいいんだろう」
「そうです。くれぐれも、私情を挟んだ感情だけで動かないでくださいね?」
「わーってるって」
ジルはチッと舌を鳴らすと、じりじりと逃げ場を作ろうとする男から目を離さないようにジェイに囁いた。
「───坊主。嬢ちゃんを助けに飛び込む度胸はあるか?」
「ああ」
強く頷く。
もともとそのつもりだった。
リリからダガーを渡された時点で、隙あらば懐に飛び込む覚悟はあった。
ただアイシェを手元に取られ、きっかけを失ったまでだ。
「よし、いい返事だ。リリ!」
「はい」
リリが作戦を小さく耳打ちした。
「────え?」
耳を疑うような内容に、動揺の色が隠せない。
それでも信じろ、と強い瞳がこちらを見つめてくる。
嘘、偽りのない意志の強い瞳。
今はそれを信じて従うしか道がない。
「いいか? 合図をしたら飛び込め。合図をしたら、だ。それまで決して動くなよ? 何があっても耐えろ!」
「…それで、助けられるんだな?」
「そうだ」
「わかった。アイシェをあいつから助け出せるなら、あんたの言う通りにするよ」
覚悟を決めてジェイが力強く頷いた。
普段なら力ずくでもアイシェを奪い取りに飛び込むが、深手を負った今の状態では到底無理だ。
部下を失ったとはいえ、相手はアサシンを牛耳る統領。
その辺の雑魚のように簡単にねじ伏せられるとは思えない。
押さえた掌から溢れる血が、まだ止まる気配がない。
少しでも気を抜けば、そのまま気を失ってしまいそうなひどい痛みだ。
本当は立っているだけでもやっとの状態だった。
「じゃぁ、行くぜ!!!」
ジルの言葉に再度、力強く頷く。
その瞬間だった。
「なっ…!?」
ジルの合わせた手の合間から水が迸り、次の瞬間、逃げる間もなくアイシェを抱きかかえたままの男を飲み込んだ。
球体がふたりを包み込む。
「……っ……!!!」
ふたりは声にならない悲鳴を上げた。
「……!!……!!!」
手が虚しく水を切る。
水から出ようともがくが、それは容易ではない。
「────水のラグナ…っ!?」
ごくりと息を飲む。
テリウスの海軍将校は水を自由自在に操り、海の力をも我が物にする。
そんな噂を耳にした事がある。
そのずば抜けた能力とラグナの力で、若くして海軍トップまで登りつめたという。
その力を目の当りにした。
何もないところから水を引き出し、それを自由自在に操る力。
それはかなりの精神力とラグナを使うのだろう。
常にそこにある風を引き寄せて操る自分のラグナとは種類が違う。
ジルは両手を胸の前に組み合わせた状態で、ラグナを維持している。
これだけの水を維持し、操れるなんてたいした精神力だ。
一緒に水に閉じ込められたアイシェの細い腕が水を切り、外に抜け出そうとするがどうにもならない。
長い髪が水中を舞う。
「おっさん!!」
今にも息切れてしまいそうなその表情に、ジェイはたまらず声を上げた。
「まだだ! 耐えろといっただろ!?」
「けどっ!!」
ジェイは拳を強く握りしめる。
今すぐに、アイシャを水の中から引き出してやりたい。
「自力で出ることはできません。水から出られるのはこちらのラグナが尽きたときか、相手の命の尽きた時────」
行く末を見守るリリが、淡々と告げた。
「それじゃ、アイシェが!!」
先に事切れてしまう。
「チャンスはあります。ローグが彼女を放したとき、水から彼女だけを引きずり出してください。今、やれば彼女を掴んでいるローグごと引きずり出しかねない。辛いでしょうが今は耐えてください」
そう言ってリリは二人を見つめる。
「────くそっ!」
ジェイは拳を握って、唇を噛み締める。
覚悟を決めた以上、行く末を見守るしかなかった。
水の中に溶けてしまいそうな表情で、アイシェが外を見つめる。
ラグナを吸い取れられて体力もさほど残ってないだろう。
それどころか、相手はもと海賊、海の男だという。
アイシェよりも先に力尽きるなんてあるのだろうか。
もし先にアイシェが力尽きたら────。
ジェイの脳裏に不安がよぎった。
「────ジルさんっ!!」
リリの声に、ジェイは弾かれたように顔を上げた。
悪い予感が的中した。
見守る先に水の中に漂うアイシェの姿が見えた。
力尽きたのだ。
「おっさんっ!!!」
「まだだ!!」
ジルが声を荒立てる。
男は苦しみながらもアイシェから手を離そうとしない。
それどころか苦痛に顔をゆがめながらも、こちらを睨みつける。
────この娘の命がおしければここから連れ出せ!!
そう言わんばかりの貪欲で、挑戦的な目だ。
「ジルさん、このままでは彼女の命が!!」
「わかっとるわ!! …くそっ!」
ジルは吐き捨てるように呟くと、精神を統一する。
もう少し長くアイシェの体力が持つ計算だった。
それなのに一刻と持たなかった。
制御リングという指輪に力を奪われ、思った以上に体力の消耗が激しかったのだ。
「…やっぱり、計算は苦手だな…っ」
ジルが眉を寄せた。
本来ならもっと早くにけりがつくはずだったのに。
「────もう限界だ」
ジェイが小さく呟いた。
全てにおいて、限界だった。
傷つき弱っていくアイシェを見るのも、何もできない自分にも。
「あんた、後は頼む」
「え、頼むって…あっ!」
リリが聞き返したのと同時。
止める間もなく、ジェイがふたりを包む水の中に飛び込んだ。
「ジェイさんっ!!」
「あの…馬鹿がっ…!!」
ジルが吐き捨てるように言った。
「ただでさえこの中は、すごい水圧だぞ…っ。ただの水の中とは、ワケが違う!しかも傷口が塞がっちゃぁいねぇくせに。…死にに行くようなもんだ…っ」
それでもラグナを止めるわけには行かない。
男は未だなお、くたばってはいないのだ。
ここでやめれば作戦は振り出しだ。
「リリ、準備しておけ」
「わかってます」
見守るリリが静かに頷いた。
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