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りくそらたのファンタジー小説おきば。
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LOVE PAHNTOM第2章 ファントム-10-  
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第2章 ファントム-10-

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| LOVE PHANTOM 第2章 | 16:37 | comments(4) | - |
LOVE PAHNTOM第2章 ファントム-9-  
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第2章 ファントム-9-

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LOVE PAHNTOM第2章 ファントム-8-  
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第2章 ファントム-8-

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| LOVE PHANTOM 第2章 | 09:47 | comments(0) | - |
LOVE PAHNTOM第2章 ファントム-7-  
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第2章 ファントム-7-

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「まぁ指輪はそれで見込みが出てきたとして、問題は石の方だな」
アイシェの体がビクリと強張った。
ジェイ自身、ずっと聞きたかったが、なかなか切り出せなかった。
それを意図も簡単にジルは尋ねる。
本当に遠まわしな事が嫌いなストレートな性格だ。
ある意味裏表がないので分かりやすい。

「単刀直入に聞くが、あの男が言っていたようにファントムっていう石を本当に持っているのか?」
ジルの質問にずっと下を向いて指輪を見つめていたアイシェだったが、しばらくして静かに頷いた。
「本当だったのか…」
ため息混じりのジェイの言葉に躊躇いを見せ、視線を泳がすとアイシェは困ったように笑った。
申し訳なさそうなそんな笑みだった。
「…石は、物心つく前からずっと肌身離さず持ってたの。
決して、人には見せたり渡したりしてはならないって言われてきた」
「どうしてそんなものをアイシェに…」
その問いに、アイシェは首を横に振る。
「私も聞いたことがあったけど、理由は教えてくれなかった。“今は話す時ではない。いずれ時が来ればおのずとわかる”って。
それまではお前を守ってくれる大事な石だから、大切にしなさいって…」
そう言ってぎゅっと胸元を握った。

こういう仕草を何度か見たことがある。
祈るようにして胸元を握りしめる仕草。
それはまるで神に仕える聖職者が、神の御前で胸に手を当てて祈るような神聖な行為のようで時々目を惹いた。
アイシェには何か信仰している宗教か神でもいるのだろうと、あまり気に留めなかった。
今思えばそれは、石を握りしめていた行為に違いなかった。


「力はいつからだ?」
「それも…物心ついた時から。
ただ初めはこんな風にいろいろ使えたりはしなかった。ごく普通に村の人達と同じように、術が使えるぐらいだったし…」 
「おいおい、普通にって…。普通の奴はラグナを術として使えねーぞ?」
「…え?
だって、村の人たちはみんな使ってたよ?頻繁ではなくて、必要に応じて使い分けてたけど。
ジェイやジルさんだって、使ってたじゃない」
アイシェは不思議そうに、ふたりの顔を交互に見比べた。
ジェイは頭を抱えた。
「ちょっと待てよ。根本的な何かが、アイシェと俺達とでは違ってるみたいだ」
「そうみてぇだな」
その言葉に、ジルも頭を掻いた。
「どういうこと…?」
アイシェだけが意味が分からないといった風に、首を傾げる。

「ちょっと整理してみよう、アイシェ」
「…うん」
「アイシェの村では、ラグナを術として使えるのが普通か?」
「うん。若い人もお年寄りも、子どもも…。みんな普通に生活に使っていたわ。
たとえば、火の属性のラグナを使える人は、それを使って火を起こしたり、月の属性を持つ人は病気の治療にあてたり…。村の外でラグナを使うことは禁止されてたけど、基本的に村の中でなら使える許可があったの。それが当たり前だったから」
「みんなアイシェのように、いくらでも術を使えたり、いくつもの属性のラグナを使ったりできるのか?」
質問の内容にジルが弾かれたようにこっちを振り返った気配がした。
その目が驚いたようにぎょっと目を見開かれている。
おそらくアイシェのそれを見たことがないジルには、今の言葉が信じられないのだろう。
自分だってそんな嘘みたいな話、実際に目の当りにしなければ信じないだろう。
「おいおい…」
ジルが物言いたげに口を開きかけたが、それにかまわずジェイはアイシェに話を続けるように促す。

「村のみんなは、ラグナを術にして使うと体力を消耗するし、属性はひとつのものだけ。
私もラグナを使って体力を消耗しないって訳じゃないの。ただ他の人より使える容量が大きいだけ。
村の人達も日頃からラグナを鍛える訓練をしているから、そういうのをやっていない人に比べると、限界も広いけど…」
質問に対して、アイシェはとても不思議そうに答えていた。
どうも彼女の中では、ラグナを術として使えるのが当たり前らしい。
ジェイやジルのラグナを目の当りにして、驚かなかった理由が分かった。
それはアイシェにとってはごく当たり前で、普通の出来事だったのだ。
外の世界に出ることのなかったアイシェにとって、村での事が常識なのだ。


「いいか、アイシェ。
外の世界では、ラグナを術として使えるのはごくわずかな人間だけだ。神官職の人間以外は、ほんのひと握りしか使えない。俺たちのようにこうやってラグナを使えるのはごくまれな事で、希少価値が高い。
分かりやすくいえば、アイシェの村では“ラグナが使えることが普通”だろうが、外の世界は“ラグナを使うのは普通じゃない”って事だ」
「え…?」
その言葉に、アイシェが驚いたよう目を見開いた。
言葉が続かない。
「この事にかかわった人間以外に、アイシェのラグナの事を知っている人間はいるか?」
「ううん。…ジェイたち以外は知らないと思う。
それに私、ひとりで村の外に出るのは禁止されていたから…」
アイシェは首を振った。
「そうか…」
安堵のため息が漏れた。
誰も知らないならそれでいい。
もしそこらの民間人が知れば驚き、驚愕し、“ラグナを自由に操る娘”としてその噂は瞬く間に国内外を問わず大陸全土に広がるだろう。
珍しがり称えられているうちは構わない。
それがいつどのようにして手のひらを返してくるか分からない。
そうなればアイシェは叩かれ自由を奪われ、下手すると魔女か悪魔のように人々から恐れられるかもしれない。
それにもし王族や神官職の者の耳に入れば、その力をこぞって手に入れたがるだろう。
ランバルディアの治安は比較的安定している方だが、いくら平和だとはいえ国を守護する体勢を怠っているわけではない。
いつ何時に敵に攻め入られても対処できるように万全の対策が立てられている。
こんな絶大な力を前に何もしてこないわけはない。
ましてやジルの所属するテリウスは今、数ある国々の中で一番勢いのある国家で、その勢力を拡大しようと手を伸ばしていると聞く。
穏やかな緑の帝国カーメルや、教皇を頂点として国が成り立っているロザリアですら、その力を目の当りにすればどう動くか分からない。
ましてやアイシェはかの伝説の石、ファントムを持っている。
それが世間に露見すれば、狙われるのは確実だ。



「石を見せてくれるか?」
「…うん」
アイシェは少しためらいながら頷くと、そっと首から下げた麻の巾着型の袋を外した。
きつく結われた麻紐を解くと、中から親指の第一関節ほどの大きさの石が出てくる。
「これは────」
ジェイは思わず息を飲んだ。

何ともいえない翠の輝きを放つその石は、不思議な色と輝きを称え、アジトで見た模造品だという美しい石が、本当にただの石ころに見えてしまうほどの神秘的な輝きを放っていた。
光の加減で七色にも銀色にも輝き、見るものを引き込み魅了する。
奥深く、美しい輝きに感嘆の声を漏らさずにはいられない。
まさに神の石という名にふさわしい輝きを持つ石だった。

「きれいでしょ?」
そう言ってアイシェは軽く石を撫でた。
撫でられた石は、まるで生きているかのように輝きを強くした。
それは目の錯覚だったかもしれないが、少なくともジェイの目にはそう見えた。
「決して外の世界には出しては駄目だといわれていたから…」
アイシェが困ったように笑う。
それはそうだ。
こんな輝きを持つ石、ファントムでなくても手に入れたがるものは五万といるだろう。
ましてや神話に出てくる伝説の石だ。
この石が世の中に露見すると想像しただけで、石を巡って争いが起こることが安易に想像できる。
そんな危険な石をこの小さな少女がずっと持って守っていたなんて。
今までよく無事だったものだ。
この石の為に、シュラ族は表舞台に立つことなくひっそりと隠れるように暮らしていたのだろうか。
一体、何の為に────。


アイシェが狙われる理由は、おそらく石を所有していることと、その底知れぬラグナの力。
そのふたつの関連性については分からないが、相手はアイシェの力とファントムを利用して何かをしようと企んでいる事には違いない。
決していい行いではないのは確かだ。
アイシェの力と、ファントムの存在価値。
それを向こうは知っている。





「じゃあ、初めから狙いは嬢ちゃんだったのか?」
「いや…。赤い目の男の目的はアイシェだったのかもしれないけど、ローグの目的は俺だったんだろう」
「ファントムを手に入れる為にか?」
「たぶんな。あの男は掴まされたファントムが偽者だということは知らなかったはずだ。本物だと信じた上で、他のファントムを手に入れようとした」
「その為に坊主の知恵が必要だった、ってわけか」
「俺でなければいけなかったかどうかはわからないけど、少なくとも俺は書物があれば古代文字を解読できる。その事をあの男がどこからか知っていて、俺を利用したかったんだろ?
古文書の解読なんて、そうそうできる奴はいねぇ。国お抱えの考古学者のお偉いさんより、俺みたいな、ならず者の方が御しやすいと思ったんだろ?大方そんなもんだ」
ジェイはため息をついた。
そんなものの為にセイラが命を落とし、アイシェまでも攫い、親友のエドでさえ利用されたのか。
腸が煮えくり返りそうなほどの苛立ちを、アイシェの手にしている石にぶつけてしまいたくなる。
この石によって全てが狂わされたのだ。
ジェイは石を叩き割ってしまいたくなる衝動をグッと押さえつけた。


「じゃあ奴は、他の石の手がかりを持っていたってことか?」
「あるいは、手がかりを記す書物を持っていたか…だな」
「そういやぁ、ファントムって他にいくつあるんだ?これひとつじゃねぇのか?」
ジルはアイシェの手の中の石を見つめた。
あまり見ていると石に引きずり込まれそうになり、持ち主を殺してでも手に入れたい衝動に駆られそうになるのであまり長くは見ないようにした。
ローグの言っていた『悪魔の石』。
語源の由来はその辺からもきているのかもしれない。

「ファントムはこれの他にあと2つあるって、おじいちゃんが言ってた」
アイシェが口を開いた。
「2つ?どこにあるかも知っているのか?」
ジェイの言葉に、アイシェは静かに首を振る。
「ふたつ、か。こんなどえらい石が他にもあるってのがすげーなぁ」
ジルがため息をついた。
「アイシェはあの男、赤い目の男を知っていたのか?」
「知らない…。初めて会ったもの」
アイシェは目を伏せた。

アイシェには分からないこと、知らない事だらけだ。
ただ石を持ち、ラグナの力が普通じゃないこと。
その理由で狙われ、今後もそれは着いて回るであろう。


「これからどうするつもりだ?」
ジルが尋ねた。
「…まずは指輪を外すこと。それが先決だろうけど、指輪をつけたままの状態であまりウロウロするのは危険すぎる。どこで奴らが狙ってくるかわからないし。
それならまずはアイシェを村に送り届けようと思う」
「村にか?」
「ああ。聞くところによると、村人達は、普通にラグナを術として扱えるんだろ?もともとアイシェと石を村から出さずに守ってきた一族だ。そこへ返してやるのが一番だろう。アイシェのじいちゃんとやらに、いろいろ聞きたいこともあるし。話が見えないことが多すぎて、下手に動けない。
指輪の事だって何か手がかりがあるかもしれない。その上で、アイシェを村に置いて俺が一度、ラスラに戻って古文書を当たってみる。何かわかったら、連絡する。それでどうだ?」
「そうだな…。それが一番いいかもしれねーな、お互いに」
ジルが頷く。
「村の人間も心配してんじゃねーか、嬢ちゃん?」
その言葉に、アイシェは深く頷いた。

アイシェが村を出てから、ひと月が過ぎようとしていた。
人知れず行方が分からなくなったアイシェの事を、祖父や村人達は心配しているだろう。
ましてやガランはかなりの年を召している。
心労で倒れたりはしていないか、そっちの方が心配だ。
そう思うと、今まで考えないようにしていた故郷を思う気持ちで、胸がいっぱいになり、アイシェの目から知らずと涙がこぼれた。
一粒こぼれると、後は堰を切ったように涙が溢れ、押さえていた何かが噴出すように涙が止まらなくなった。
無理もない、まだ十台の娘なのだ。
「アイシェはどうしたいんだ?」
気遣うように、アイシェにそっと聞いた。
「村に…帰りたい…」
小さくそう告げると、アイシェは手で顔を覆った。
「…決まり、だな」
そう呟くと、後はまかせたぞと言わんばかりにジルは肩を叩き、扉の向こうへ消えていった。

ジェイは少し迷った後、アイシェの髪をそっと撫でてやり、そのままそっと抱きしめてやった。
アイシェは一瞬、身を堅くしたが、髪を撫でるジェイの手があまりに優しくて、押さえていたものが堰を切ったように溢れ出した。
村に帰るまでは泣くまいと思っていた決心が、ジェイの優しい手と暖かい胸によって解放されていく。
それは昔からそこにあった祖父ガランや、娘のように可愛がってくれた村人達の暖かいぬくもりに似ていた。


嗚咽を漏らして泣きじゃくるアイシェを、ジェイは落ち着くまで優しく抱きしめてやった。






>>To Be Continued
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