RS FANTASY

りくそらたのファンタジー小説おきば。
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LOVE PAHNTOM第3章 月のない夜-8-
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第3章 月のない夜-8-

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微かに人の声を聞いた―――。
そんな気がして、アイシェは足を止め、辺りを見渡した。
目を凝らして甲板をぐるりと見渡すが、誰もいない。
聞こえてくるのは耳障りな風の音と、波が船底に打ち寄せる音。
でも、確かに聴こえるのだ。
歌声が。
音として耳に聴こえてくるのではなく、直接、心の奥深いところに響いてくるような、そんな歌声。
こんな夜更けに、誰が歌っているのだろう。
その声に引き寄せられるように、アイシェは歩み進めた。
耳はいい方だ。空耳なんかじゃない。
妖艶で透明感のある歌声が、甘く痺れるように身体の隅々まで浸透していく。
誰かに呼ばれ、誘導されているような、フワフワと宙に浮く感覚。
まるで操られているというのに、不思議と嫌な感じはしなかった。
導かれたのは船の先端。
向かうべき貨物室とは、真逆の方向だった。
目を凝らすと、遥か海の向こうに浮かび上がる島。
辺りは漆黒の闇であるというのに、なぜその島だけが見えるのか。
青白い光を発するそれは、宙に浮いているような気もする。
あれは、何なのだろう。
わからない。
なぜ自分が、こんなところにいるのか。
何の目的で船に乗り、どこに向かっているのか。
誰と、一緒にいたのかも。
そもそも自分は誰なのだろう。
この世に存在していたのだろうか。
わからない。
何も分からなくなった。
分かることといえば、あの島に“呼ばれている”ということ…。
引き寄せられるように、海へと身を乗り出し、亜麻色の髪を波打たせ、アイシェは白き腕をどこまでも広げた。
まるで海を抱くように―――。




「―――危ない…ッ!」


悲鳴にも似た声と、力強く引き寄せる腕に掴まれて、夢が途切れた。
バランスを崩し、湿った甲板に思い切り身体を打ちつける。
痺れるような痛みが体中を駆け抜け、それを堪えて目を開けると、闇の色が飛び込んできた。


「…私…―――」


一体、何をしていたのだろう。
今し方、身を乗り出して、海に飛び込もうとしていなかったか。
あの、青をいくつも重ね闇のように暗くなった海の底に…。
なぜ自分がそんなことをしようとしたのか、理解できない。
ジルが捕まり、ジェイを探して甲板に出て。
それから…―――。
思い出せない。
そこだけぽっかりと記憶が抜け落ち、頭の芯がぼんやりと霧が掛かったように霞んでいる。
一瞬だったのか、それとも随分と時が経っているのか。
それさえ、思い出せない。

(…うそでしょう…。記憶がない、なんて……)

アイシェはゾクリと身を震わせ、その身体を抱きしめた。
腕を掻き寄せた時、ふと視界をかすめたのは、ガウンの肩口にべったりと付着した血の色。
え?と思い、身体の異変を探る。
確かにひどく床に打ちつけたのだけれど、裂けて血が流れるほどの外傷は見当たらない。
不思議に思い視線を泳がせると、すぐ側で影のように人がうずくまっていることに気付く。
どうしてこんなところに―――という疑問よりも、先に体が動いた。


「…大丈夫ですか?」
背中に恐る恐る、声を掛けてみる。
影は左肩を押さえて、痛みを堪えるようにうずくまっていた。
おそらく彼が、アイシェを現実に引き戻してくれたのだろう。
勢い余って床に叩きつけられ、ひどく背中を強打したらしい。
ううっ、と唸るようなうめき声が漏れた。
肩を押さえる手からは、じわりと血が滲んでいた。
「この傷……」
思わず引き寄せた手は、豆が破れたように皮がずるりと剥けていた。
何か重い物を引きずって擦れたような、そんな皮の剥け方だった。
その痛々しさに、アイシェは苦い顔をする。
「とりあえず、手当をしなきゃ。このままじゃ、雑菌が入っちゃう…」
アイシェは何の躊躇いもなく、自分の着ていたガウンを脱ぎ、その裾を裂くと、それを手早く手のひらに巻きつける。
ラグナが使えるのであればこれぐらいの傷、治してやれるのだが、今のアイシェに出来ることといえば、これが精一杯だった。
「はい。これでもう、大丈夫―――」
そう言って顔を上げた時、初めてその人の顔を見た。

スラリとした背、端正な顔立ち、目尻の下がった優しげな目元。
闇夜に溶けて、黒なのか茶なのか、それとも藍なのかわからない深い色合いの髪が、はためいた。
年の頃は十代半ばぐらいに見える。
「ありがとう」
穏やかな声色はひどく落ち着いていて、なぜか安心できるような温かさを持った少年だった。
「あなたが助けてくれたの…?」
知らない人だというのに、なぜか恐怖心や警戒心はなかった。
彼から漂ってくる穏やかな空気に、張り詰めていた不安がゆっくりと溶け出した。
「君が海に飛び込もうとしていたから…」
「私が、海に……」
「覚えていないの?」
「…うん……」
アイシェは曖昧に頷いた。
覚えていないだなんて、そんな馬鹿げた話があるかと思うのに、それが事実。
飛び込むに至るまでの記憶が、すっぽりと抜け落ちているのだ。
「その手、どうしたの?もしかして…私を助ける時に?」
「ああ…これ?違うよ。君は関係ない。ここに来る前に、ちょっと慣れない作業をしていたから…」
ゆったりとした笑顔を返された。
思わずアイシェも笑って返す。
「それよりも…。君の左手の指輪。それはどこで?いつからはめてるの?」
男の視線が、アイシェの左手に泳いだ。
ギクリと身体を震わせて、思わずアイシェはその手を体の後ろに隠す。
「その指輪。少し、見せてもらえないかな?」
そう言って手が差し出された。
「……これは…ただの指輪だから…」
アイシェは首を横に振る。
あまり人に見せるのは気が進まない。
「ただの指輪なら、見せるのに差し支えはないだろう?」
気まずそうに視線を外した瞬間、左腕を捕まれ強引に引き寄せられた。
「…あ…ッ」
バランスを崩した身体が、ぽすんと男の胸に納まる。
アイシェは慌ててそこから放れようとするが、がっちりと握った左腕を男は放してくれなかった。
繊細な指がそっと指輪に触れた。
「…これ……。ただの装飾品じゃないだろう?呪術が施してある」
「…わかるの……?」
「こういうの、興味あるから」
男が指輪を指でなぞると、刻み込まれたグラフィティが浮かび上がってきた。
視界も利かないような暗闇だというのに、不気味に光るその文字は、闇の中でも見て取れた。
かつてこんなにも強い光を発したことがあっただろうか。

ポツリ。
雨粒が頬に落ちた。
「…降ってきたな」
空に手をかざし、雨を身体に感じ取る。
「中に入ろう。風邪を引く。もっと明るいところでそれを見せて」
「え…」
アイシェの返事も待たず、空いていた室内への扉を開いて、その中に身体を押し込んだ。
背後でバタンと扉の閉まる音がひと際大きく響いて、アイシェは身を縮こまらせた。
嫌な予感がした時にはすでに遅く、両脇に腕を付いて囲われていた。

「…なに……?」

アイシェはさほど変わらない身長の男を見遣った。
薄暗い光に、まだ目が慣れない。
「君はもう少し人を疑った方がいいね」
耳元で囁かれた。
「見ず知らずの者に、不用意に近づかない方がいい。僕が悪党や人買いだったら、どうするつもり?相手の思う壺だよ?」
綺麗な瞳が闇夜にキラリと光ったかと思うと、伸ばされた手が頬に触れる。
ヒヤリとした冷たい感触が頬を撫でた。
ジェイのゴツゴツとして骨ばった手とは違う、繊細で儚い印象の手だった。
「平気よ。だって、あなたの目はちっとも怖い感じがしないもの。優しい色をしてるから」
アイシェは感じたままを口にした。
男は一瞬、驚きの色を見せたが、すぐに表情を和らげて微笑んで見せた。
その表情が一層、安心感をもたらすというのに。
「…まいったな。
そんな風に言われると、君に何もできなくなるじゃないか―――」
それを打ち壊すような言葉が、男の口から発せられた。
「……え…?それってどういう……んんッ…!?」
不意に唇が塞がれた。


「…シッ。黙って―――」


「―――アイシェさん?どこですか?!」
扉の向こうで、リリの声が聞こえる。
「…っんん…ッ…!?」
声が漏れないように口をきつく塞がれる。
振り返ろうとしたがそれさえも叶わず、そのまま体を拘束され、奥に連れ込まれた。
「ンーーっ、ンンーーーッ!!」
そこで初めて、自分の身が危険なのだと感じたアイシェは、声を上げようと、塞いだ手を外しにかかったがびくともしない。
油断した。
物腰が柔らかく穏やかな雰囲気を纏っていても男だ。
力では適うはずもない。
自由の利かない体で、懸命に腰もとの短刀に手を伸ばすが、思うように動かせない。
無我夢中でもがいても、拘束する手はわずかも揺るがなかった。
「…離し…てっ…」
やっとの思いで腕を振り切り、解放された唇で拒絶の言葉を吐き出す。
「……あなた…誰―――?何が目的なの…?」
恐怖で声が上ずった。
人に裏切られる恐怖。
それは痛いほど身に沁みたというのに、またしても油断してしまった。
そんな自分の不甲斐なさに腹が立つ。
「…君はもう少し人を疑うことを覚えた方がいい。その他意のない優しさがいずれ、命取りになる」
その上それを陥れた相手に指摘されるなんて。


「僕は君を逃がす為に、ここに来た―――」


耳を疑うような言葉を告げられた。



「……え…?」


(今、逃がすって言った…?…私……を…?)

何を馬鹿げたことを言っているのだろう。
連れ去るというならまだしも、“逃がす”というのはどういう了見なのか。
わからない。男の意図が見えない。

「このまま船に乗っていれば、君は間違いなく命を落とす運命にある。すでに先刻も、あちらの世界に足を踏み入れかけた」
「…あちらの世界って……」
「我々が生きているこの世界とは、違う異なりで出来ている世界のことだよ。簡単に言えば、“異界”。君も聞いただろう?“魔の領域”に足を踏み入れている―――と」
確かに聞いた。
夕刻のトラブルで、ジルがしきりに叫んでいた言葉だ。
その不気味な響きが、今でもざらりと耳の奥に残っているような気がして、アイシェは身を震わせた。
「君にはそれを開く力がある。意思とは関係なく、君の力が作用してしまう。異界へのゲートはここだけではない。油断すると簡単に引きずり込まれてしまう」
「…開く力……?」
震える声で復唱する。
異界だのゲートだの言われても、訳が分からない。
自分は夢でも見ているのではないかと、疑ってしまう。
「君はこの船に乗るべきではなかった。
この船は“島”に引き寄せられたのではない。君が、“異界”を引き寄せたんだ―――。このまま君が船に乗っていれば、間違いなくこの船は乗客を道連れにして、暗い海の底に沈む」
「……まさか……」
アイシェは震える身体を抱きしめるように、両腕を掻き寄せた。
こんな大海原のど真ん中で船が沈めば、間違いなく命はないだろう。
昼間ならまだしも、今は深い闇夜だ。
「―――今ここで、死なせるわけにはいかない。だから、僕は君を逃がしに来た」
強い意志で告げられた。
やはりこの人からは悪いラグナは感じられない。
この期に及んで、そんなことを考えてしまう。
けれどこのままでは、確実にここから連れ去られてしまう。
命の危険とは違う危機が、すぐそこに迫っていた。

「私がこの船を降りれば、みんなは助かるの…?」
動揺を悟られないように、できるだけ平然を装って問いかける。
じわりと退路を確認し、足を引いた。
「選べと言っているわけじゃない。もう君には船を降りるしか、選択肢はないんだ」
「……え…?…んぐ…ッ…!?」
突然、男は腕を伸ばしアイシェの顎を掴んだ。
小柄な体つきからは想像もできないような力強さで、アイシェの身体を引き寄せる。
「もう、時間がない。詳しい話はまたいずれ。生きていればまた、運命が巡り合わせてくれる」
顎を掴む指に力が入る。
その手にしがみついたアイシェの両腕を片手でいなし、身体の後ろで拘束する。
「…イヤ…ッ…!放し、て…っ…んんっ…!!」
指が口の中に突っ込まれた。
不快さに身体の底から震えが走る。
思い切りその指に歯を立てるが、その手に揺るぎはなかった。
乾いた鉄のような血の味が口の中に広がるだけ。
拒絶を示すアイシェの唇を無理矢理こじ開け、懐から取り出した得体の知れない液体を喉に流し込んだ。
「…んんん……ッ」
強引に唇を閉じられる。
甘いような苦いような、何ともいえない奇妙な味が口の中いっぱいに広がる。
液体が触れた箇所から痺れをもたらすというのに、それを吐き出すことを許されず、そのまま飲み込んでしまった。

「…な、に……?」

効果はてき面だった。
ぐにゃりと視界が歪み、身体のいたるところから精気が抜けていく。
意識はあるのに、自分はそこに存在しないような浮遊感。
夢なのか、現実なのか。区別がつかない意識の狭間。
身体のありとあらゆる神経が、欠片のようにぽろぽろと剥がれ落ちていくような気がした。
自分の足では立っていられなくなって、雪崩れるようにその場に倒れこんだ身体をその腕に抱きとめられた。
「…や……っ…」
微かに動く唇で拒絶の言葉を吐き出すのが精一杯で、声帯が麻痺するのも時間の問題だった。
痺れは次第に体中を侵食して行き、視界さえも歪む。
今は、息をするのがやっとの状態だ。
眠りに堕ちてはいけない―――と、頭の中で危険のシグナルが鳴り響くのに、気持ちとは裏腹に夢の世界へと引きずり込まれてしまう。
もう意識は、自分とは別のところにあった。


「…ジェ、イ……―――」


最後に浮んだのは、ジェイの碧く強い瞳。
いつも側にある穏やかで力強い風のラグナが、この時は感じられなかった。

(…そうか…私。いつもジェイのラグナに、守られてたんだ…)

薄れ行く意識の中で、必死に手を伸ばす。
けれど、それが誰かに受け止められることはなかった。
もうこのまま、ジェイには会えないような気がした。
視界に紗が掛かり、身体の力が抜けていく。
夢なのか現実なのかさえ、分からなくなった。
ふわりと身体が宙に浮くような感覚がして、誰かに抱き上げられた。
ふわふわと揺れる浮遊感が、心地よい眠りを誘う。
抱き上げられた身体を狭い空間に横たえられ、薄れ行く視界に紫紺の空が見えた。
それが船で見た、最後の光景―――。


「僕の役目はここまでだ。ここから先は、僕達の手の及ばない領域。後は、自分の手で、未来を切り開いて。
今以上に過酷な試練が待ち受けてるけれど、君ならきっと、大丈夫だから…」


その言葉はまるで、願いのような、祈りのような。
そんな響きに聴こえた。


「―――気をつけて。いつも誰かが、君達を見てる…」


そして、夢に堕ちた。





□ □ □




「―――アイシェ!!アイシェ…ッ!!」
一度、部屋に戻ったリリから、アイシェの姿が見えないと報告を受けてから随分と時が経っていた。
辺りは相変わらずの漆黒の闇で、利かない視界に懸命に目を凝らしてその姿を探すが、手がかりが何もない。
降り頻る雨のせいで、闇の色が一層、濃くなっているようにも思える。
「いたか!?」
「いや」
ジェイは首を横に振った。
目を離すべきじゃなかった。
アイシェが狙われているのは、分かりきっていたはずなのに、側から離れるなんて。
何かあるといけないからと、アイシェを部屋に残すことで危険を回避したつもりが、更なる危険を呼び込んだ。
もしもアイシェの身に何かあれば、悔いても悔やみきれない。
夜空を見上げると、そこには漆黒の闇が広がっていた。
月のない夜空は、気味が悪いくらい闇の色が深く、その濃さに飲み込まれそうになる。
アイシェは、月のない夜を怖がっていた。
こんな深い闇の中を、長くひとりで出歩いたりはしないはずだ。
ヒヨヨヨォォォーーー。
風が岩の間を抜けるような音が耳を掠めて、鼓膜の奥を不気味に揺らす。
雨が降っているというのに妙に暖かく湿った風が、纏わり付くように身体を撫でていく。
嫌な風だ。気味が悪い。
ジルが言っていた“魔の領域”に近づいているのは、間違いないと確信する。
本能がそう感じていた。
ふと。
先ほどリリが言っていた言葉が、脳裏を掠めた。
乗組員が連れ去られる場合は、“何か”を見たのだ―――と。

「…まさか、な」
ジェイは乱暴に頭を振り、よぎった考えを振り落とす。
「こんだけ探しても見つからねぇんだ。まさか…海に堕ちてたりしてねぇだろうな…?」
戦慄が走るような言葉を、ジルが吐き出した。
これほど探しても見当たらないのなら、その線も考えられる。
こういう時の悪い予感は、嫌というほどよく当たる。
「ジル将校!ジェイさん…っ!!これを―――」
物陰に脱捨てられていたガウンを、リリが発見した。
雨水と潮を含んでじっとりと湿ったそれは、確かに見覚えがあった。
「……アイシェの―――だ……」
間違いない。
これを着たアイシェを自分の腕に抱いて眠っていたのだから、見間違えるはずがない。
裾が破れ、腕の部分には血痕が染み付いている。
裾は、何かに引っ掛けて破れたという跡ではなかった。
裂け具合からして、意図的に、誰かが破いたものだと見受けられる。
血痕はアイシェのものなのか、それとも他の者の物なのかはわからないが、アイシェが“誰か”と接触したことには違いなかった。

「…クソ…ッ!!」

ジェイは近くにあった樽を、思い切り蹴り上げた。
何かに怒りをぶつけなければ、この状況をやり過ごせない。
握りしめた拳が怒りと自分への苛立ちで、わなわなと震えた。
「坊主!!」
「何だ…ッ」
苛立ちを隠そうともせず、ジェイが叫んだ。
「救助用の船が一艘ない!!ロープで切られた跡がある!!」
弾かれたように振り返り、痕跡を追っていたジルに駆け寄った。
残されたロープにも、わずかに血痕が残っていた。
やはり誰かが故意にアイシェを攫ったのは、間違いなかった。
「“奴”か?!」
思い当たるのは、フードを被った赤い目の不気味な男。
あの男ならばラグナを使えば、ここからアイシェを攫うことなど、造作ないだろう。
「わからねぇ。“奴”なのか、それとも“他の者”なのか―――」
「…チッ…!」
ジェイが悔しそうに拳を壁に叩き付けた次の瞬間。
鈍く、けれど激しい衝撃が船の上を駆け抜けた。
大きく右に船が傾き、足元を掬われる。
「何だ!?」
「…いけない。この衝撃は―――!」
弾かれたように顔を上げたリリとジルの視線がぶつかった。
言葉にせずとも、長年培ってきた“船乗り”としての感覚が打ち響く。
「チッ…。こっちは後回しだ。リリッ!!すぐに向かうぞ!」
「はい!!」
「どういうことだ?何なんだ、今の衝撃は―――!?」
「悪いが、そっちに構ってられなくなった。
アイシェがいるならとっとと探せ!いないなら、覚悟を決めろ!」
「…どういうことだよ…」



「船が…座礁しやがった!!だから言ったのに…っ!!」



ジルが思い切り都合が悪そうに、苦い顔をした。






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